講師●野沢秀雄
PROFILE
のざわ・ひでお/1940年生まれ。京都大学卒業。日本で初めてプロテインを開発。健康体力研究所を設立し、現在は顧問。社団法人日本ボディビル連盟で公認指導員講習会の講師を長年務める。身体作りやトレーニングについてメディアから多くの取材を受け、雑誌や新聞に多数連載を続けている。
持久力は赤い筋肉?
長距離競技か距離競技か、得意な走りが人によりあるでしょう。それぞれを得意なタイプの選手の大腿部の筋肉をバイオプシー(生検)という方法で採取し、その組織を特殊な染料に浸して顕微鏡で観察すると、長距離選手の筋肉は赤い部分が多いのに対し、短距離選手は白い部分が多いことが判明しました。
持久力に恵まれた選手は筋肉自体が酸素消費能力に恵まれ、疲れにくい性質になっています。遠海を回遊するマグロ、カツオなどが赤みの肉質であることと一致します。一方、瞬発力に恵まれた選手の筋肉は瞬間的に筋肉を収縮する能力に恵まれ、パワーやスピードを発揮しますが、疲れやすい欠点があります。魚でいえば、沿岸で育つタイやヒラメの肉質が白身であることと一致します。
ただし、人間の場合、見ただけで筋肉が赤かったり白かったりするわけではありません。念のため……。
走り込み以外に筋トレも
瞬発力をつけたい場合、筋トレで重い負荷をかけて筋肉を大きくすることが一番ですが、持久力をつけたい場合は一般には走り込むことが一番とされています。走ったり、泳いだりする運動は有酸素運動と呼ばれ、肺や心臓を強くするのに最適です。スポーツで疲労すると呼吸が苦しくなって動けなくなりますが、肺や心臓を強くすると、長く動き続けられる持久力がつきます。
このように走ることは大切ですが、走るだけでなく筋トレでも方法次第で持久力がアップします。たとえば何も持たず自分の体重だけで、100回、200回……とスクワットする方法が、持久力を高めるのにお勧めです。このように重い負荷などはかけないで回数を重ねることで、心肺機能を鍛えることになるのです。これは、プロレスや空手などの選手たちが採用しています。
このほかに、意外な方法で短期間に持久力がつく秘密を公開しましょう。ポイントはフクラハギです。
フクラハギは第2の心臓
多くのスポーツで試合や練習の後半に走れなくなるのは、呼吸が苦しくなる前に、実は下半身の筋肉が動かなくなるのです。「走るスピードが落ちる」という現実が先立ちます。これには、地面を強く蹴るフクラハギの力が大きく関係します。
私の長年の研究で、フクラハギの筋肉が発達している人ほどバテにくいことが判明しています。「黒人は白人に比べてフクラハギが細い」と言われますが、彼らの脚はスリムで脂肪がついていません。実際に近くで彼らのフクラハギを見ると、筋肉の塊で太さも充分にあります。
持久力に自信がない人はイラストで紹介するトレーニングを実行する習慣をつけ、フクラハギを鍛えましょう。自分でも驚くほどスタミナが向上するはずです。
食事のワンポイント
こむらがえりの防止に酢
貧血になると、酸素が運ばれませんので鉄分をしっかり摂ってください。また、筋肉がつりやすい人は酢のもの不足が原因の一つ。毎朝の食事に酢をたっぷりかけて様子をみてください。筋肉の痙攣がぐんと少なくなります。
フクラハギ強化トレーニング
「カーフレイズ」「ドンキー・カーフレイズ」は連載3回『脚を強くする』でもご紹介しましたが、フクラハギ強化に欠かせません。腹筋とフクラハギは毎日よく使うので、毎日トレーニングしても大丈夫な筋肉です。
強いカラダをつくる12の鍵、第8回「持久力を高めるカギ」は以上です。
連載はまだまだ続きます!予定は次の通り!
- 第1回「身長を伸ばすカギ」
- 第2回「胸を厚くするカギ」
- 第3回「脚を強くするカギ」
- 第4回「体幹を鍛えるカギ」
- 第5回「肩とヒジを強くするカギ」
- 第6回「ヒザと足首を強くするカギ」
- 第7回「握力を強くするカギ」
- 第8回「持久力を高めるカギ」
- 第9回「運動神経を良くするカギ」
- 第10回「視力を良くするカギ」
- 第11回「余分な体脂肪を落とすカギ」
- 第12回「ぐっすり眠るカギ」
この内容は「熱中!ソフトテニス部」24号に掲載したものを再掲載したものです。雑誌のバックナンバーをお求めの方はBBM販売サイトよりご注文ください。