講師●野沢秀雄
PROFILE
のざわ・ひでお/1940年生まれ。京都大学卒業。日本で初めてプロテインを開発。健康体力研究所を設立し、現在は顧問。社団法人日本ボディビル連盟で公認指導員講習会の講師を長年務める。身体作りやトレーニングについてメディアから多くの取材を受け、雑誌や新聞に多数連載を続けている。
運動神経は鍛えられない?
運動神経という言葉は「あの人は運動神経が発達している」「自分は運動神経がにぶい」などという使い方で、一般に多く使用されています。これは、医学的には間違った使い方です。解剖学では「運動神経とは脳から筋肉に指令を伝える神経」のこと。末端の筋肉や皮膚から情報を脳に伝える知覚神経に対応しているのです。つまり、感じた情報は知覚神経と運動神経の2つの神経を往復することで「動かす」という目的が達成されます。運動神経は誰にも同じように分布しており、「優れている」とか「にぶい」「劣っている」といったことはあり得ないのです。
むしろ、「反射神経」というほうが適切です。ガスの火にかけて熱くなったヤカンに指がふれると、「アツッ」と思わず手が引っ込みます。「熱い」という情報が脳まで行く前に脊髄で感じて、脳に行く前に手が反応して手を引っ込めるのです。
実は、多くのスポーツ練習で鍛えているのは運動神経ではなく、反射神経のほうです。目がとらえた瞬間に身体が無意識に動くように鍛えているのです。いちいち頭で判断するのでなく、カラダの筋肉が覚えて反応できるように訓練しているのです。今回のテーマもこちらの反射神経にかかわる内容です。
幼少期なら無意識に会得
ピアノやバイオリンなどの音楽、野球やテニス、サッカーなどのスポーツなど、プロとして成功している人は、3歳ころから音楽やスポーツを始めている人も多いものです。幼少期ほど、カラダが無意識にテクニックを会得できるからです。
「大学生になって初めて音楽、テニス、野球を始めた」という人が、一流になった例は多くありません。高校生でも遅く、せめて中学時代から本格的に入門しないとカラダが素早く反応できないのです。
ソフトテニスの皆さんが毎日繰り返している練習は「反射神経を高めるため」というのが真実です。反射神経は訓練で高められます。いろいろな状況に対応して無意識に、反射的に素早く筋肉が動くように鍛えているのです。
遊びながら鍛える
実際に、われわれは子供時代にいろいろな遊びを通して反射神経を強くしています。走ったり、投げたり、転んだり、鬼ごっこをしたり、自転車に乗ったりして、カラダが自然に動くようになります。
ところが最近は「危険だから」と屋外で遊ぶ機会が減っています。ゲーム器具ばかりで田舎の自然と遊ぶ機会はほとんどありません。残念なことです。
今回は、そんな反射神経を鍛える方法を紹介しましょう。今回の方法は、ありきたりのようですが、効果は大きいですよ。
なお、神経を発達させる栄養素としては、カルシウムやビタミン類が関係します。小魚や海苔、新鮮な野菜をしっかり食べましょう。また
視力、特に動体視力も関係します。こちらは次回にご期待ください。
一人で行えるメニュー
①マークキャッチ
②モグラ叩き
③バッティングセンター
2人で行えるメニュー
④キャッチボール
⑤ボクシング
⑥影踏み
⑦手の甲叩き
強いカラダをつくる12の鍵、第9回「運動神経を良くするカギ」は以上です。
連載もそろそろ終盤戦!ぜひ12のカギをコンプリートしてね!
- 第1回「身長を伸ばすカギ」
- 第2回「胸を厚くするカギ」
- 第3回「脚を強くするカギ」
- 第4回「体幹を鍛えるカギ」
- 第5回「肩とヒジを強くするカギ」
- 第6回「ヒザと足首を強くするカギ」
- 第7回「握力を強くするカギ」
- 第8回「持久力を高めるカギ」
- 第9回「運動神経を良くするカギ」
- 第10回「視力を良くするカギ」
- 第11回「余分な体脂肪を落とすカギ」
- 第12回「ぐっすり眠るカギ」
この内容は「熱中!ソフトテニス部」25号に掲載したものを再掲載したものです。雑誌のバックナンバーをお求めの方はBBM販売サイトよりご注文ください。