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2016.11.14

韓国で“スパイ”と呼ばれる(!?)ほどの韓国通ソフテニHP田中氏が語るキム・ドンフン/キム・ボムジュンのすごさ

アジア選手権直前ライバル韓国情報男子チーム【前編】

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左がキム・ドンフン(スンチョン市庁)で右がキム・ボムジュン(ムンギョン市庁)。2014年のアジア競技大会ダブルスチャンピオンで、2015年の世界選手権ではダブルス準優勝

11月17日から第8回アジア選手権がいよいよスタートする。昨年の世界選手権では7種別中6種目で金メダルを獲得した韓国。2014年のアジア競技大会でも全種目で金メダルを独占している。2005年から毎年、韓国の代表予選会を取材し、韓国で“スパイ”と呼ばれるほど韓国に精通しているソフトテニス・ホームページの田中俊充氏に韓国の強さのヒミツを聞いた。前編の今回は、男子のエース、キム・ドンフン/キム・ボムジュンについて。

田中俊充
ソフトテニス・ホームページを運営。国際大会観戦歴は20年以上。2005年からは韓国の代表予選会を毎年取材している。中華台北、アジア全般のソフトテニスに精通。

速い、強い、さらにうまいのがドンフン

――韓国のエース、キム・ドンフン/キム・ボムジュンの強さについて教えてください。

非常に難しい質問ですが、まずドンフンはあらゆる面で強い。日本人がイメージする韓国選手は速い、強いですが、ドンフンはさらにうまい。うまさの方がすごいと僕は思います。あらゆるコースにあらゆるスピンのボールを持っていける。ロビング、シュートも自由自在。韓国の大会を戦うドンフンを見て感じたことですが。国際大会ではまだ彼本来の持ち味を出し切れていないように思います。
一般に、日本人選手の方がうまいと言われていますが、僕はそう思っていません。

――韓国の選手は“うまい”より速いイメージでした。

韓国の選手はもともとうまいんですよ。韓国ではかつて韓国ボールが使われていて、日本のボールより質が低く、不安定で、ボールをていねいに扱う(打つ)能力は高かったんです。韓国ボールで勝つには必然的に勝負が速くなるので、ていねいかつ速くてアバウトなところもあった。韓国のプレーはアンビバレントなところがある。

――「韓国=バックハンド」のイメージもあります。

日本にはない速さですよね。最初に見たときはあんなバック見たことないと思いましたよ。日本はフォアに回り込んで打つように言われますから。ただ、近年、日本人選手と韓国人選手のバックの技術にそれほど差はないと思います。

――韓国人選手と日本人選手のテニスの違いは?

球質ですね。当たりが違うというか。アジア選手権で初めて韓国選手のテニスを見る人は、球質の違いに驚くと思います。回転の量が違うというか、よりフラットなボールを打つのが韓国なんです。弾道が低い。日本の選手は回転をかける。どちらがいい悪いではなく、とにかくテニスが違うんです。

――キム・ドンフンに話を戻しますと、彼のどんなところに注目すべきでしょうか。

ドンフンはうまさを見てほしいです。バックのロビングは、日本ではなかなか見られないですよね。バックハンドで流しで、スピンをかけてパーンと上げる。あ、うまいなと感じてもらえば。

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キム・ドンフン(左)は韓国でプロとしてプレーしている。ドンフン本人によると日本円で「月55万円ほど」の給料を得ているという

アジア競技大会で超進化、ボムジュンは世界一の前衛

――ペアの前衛、キム・ボムジュンについて。

彼は見た目も良いですが、人柄も良いんです(笑)。ナイスガイ。ただ、彼の場合、2013年(東アジア競技大会)までは、選手としてそれほど魅力を感じなかった。ドンフンがすごすぎて、偉大な選手とペアを組むのは大変だろうなという気がしていました。それが、2014年のアジア競技大会では素晴らしい選手になっていたんですよ。なんでこんなに変われたのかって!

――2014年のアジア競技大会で、キム・ボムジュンはどう進化したのでしょう?

バックボレーに磨きがかかりましたね。2012年にムンギョン市庁入りしてキム・ヒースー(90年代から2000年代に活躍した元韓国代表の前衛でムンギョン市庁の女子監督)に教わり、プレーの質が変わりました。さらに、2014年のアジア競技大会でボムジュンがキム・エーギョンとミックスダブルスで組んだときに、エーギョンが所属するNH BANKコーチのユウ・ヨンドン(韓国史上ナンバーワン前衛でアジア競技大会ダブルス優勝2回・1994年と2002年)の薫陶を受けたのが大きかったとボムジュン本人は強調していました(同大会のミックスでエーギョン/ボムジュンは優勝)。

ボムジュンは、アジア競技大会、世界選手権とここ2つの国際大会では完璧に近かったですね。韓国は90年代後半から2008年くらいまで、特に前衛が良かったんです。それ以降、シブい前衛はいましたが、2014年以降はボムジュン、パク・キュチョル(今回のアジア選手権に出場せず)が名前衛の系譜を受け継いでいると思います。ボムジュンは、世界のナンバーワン前衛と言っても間違いないんじゃないかな。

――ボムジュンのどんなところがすごいのでしょう?

完璧。なんでもできちゃう。バランス感覚に優れていて、ゲームを壊すことがない。2013年まではミスも多かったですが、技術的に完璧になってミスがなくなった。まだ伸びている印象です。コートの外では人懐っこくて子供好き。そういうところも含めて、スター性があるんですよ。奥さんも美人です(笑)。韓国では、ソフトテニス界のイ・ヨンデ(韓国のイケメンバドミントン選手で北京五輪の金メダリスト)と言われています。

――今年のキム・ドンフン/キム・ボムジュンの調子はいかかでしょう?

悪くないと思います。9月の千葉の合宿では練習をよくしていました。今年のアジア選手権は砂入り人工芝コートでの開催なので、代表選手はハードコートの国内の試合に出ていなかったんです。先日の韓国の国体はできたばかりの砂入り人工芝コートで開催され、団体とシングルスでドンフンが優勝しました。ボムジュンは違うチームなので、国体では組まないのですが、代表予選会では良かったです。ドンフン/ボムジュンのダブルスは完璧で予選会で一度も負けませんでした。韓国国内に敵はいませんね。

>>【後編】韓国女子情報、田中さんが韓国のソフトテニスにほれ込み、“スパイ”と呼ばれるほど韓国に通い詰めるようになったきっかけは明日11/15に公開!

第8回アジア選手権大会
千葉県千葉市・フクダ電子ヒルスコート
11月16日(水)開会式
17日(木)シングルス
18日(金)ダブルス、ミックスダブルス
19日(土)ダブルス
20日(日)国別対抗戦、閉会式
※スケジュールは変更の可能性あり

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写真◎川口洋邦 取材・構成◎内田麻衣子(ソフトテニス・マガジン編集部)