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2017.02.02

船水颯人が語るフェデラー「すごいことを普通にやる、僕の目指すところ」

【WEB連載】船水颯人『JKTへの道』#04 フェデラーとカラダの使い方

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全豪オープンでケガから華麗なる復帰を果たし優勝した35歳のロジャー・フェデラー。インドアシーズンのある日、二十歳になったばかりの船水颯人は憧れのフェデラーについて話し始めた。どうすごいのか、ソフトテニスに応用できることは?

ソフトテニスマガジン・ポータルでは、船水颯人の2018年ジャカルタ(JKT)アジア競技大会に向けた取り組みをインタビュー連載で追っていく。船水颯人『JKTへの道』第4回は、フェデラーのカラダの使い方から始まり、小学生時代のコーディネーション・トレーニングの話へ。

船水颯人/ふねみず・はやと 1997年1月24日生まれ。青森県出身。身長170㎝、右利き、後衛。黒石烏城クラブ(小1)→黒石中→東北高→早稲田大

フェデラーの、リズム、タイミング、バランス

――1月の全豪オープンで優勝したロジャー・フェデラーが好きだという話を聞きました。

好きですね。全豪オープンを見ながら、やっぱりカラダのバランスが良いなあ、と思いました。回り込みがうまい。フェデラーは逆クロスで打つときも、カラダのバランスが崩れないんですよ。あれをマネしたいと思い、練習しているのですが、なかなか難しくて。ソフトテニスの場合、あの体勢からはなかなか打てないコースです。ソフトテニスのボールは柔らかいので、同じように打っても、引っかること(ネット)が多いんですよ。

――フェデラーのマネできる部分は?

回り込みの技術は見習いたいと思います。カラダの使い方は、参考になります。シングルスでは生かせると思っているので、ずっと練習しているんです。硬式テニスとソフトテニスはネットの高さが違うので(硬式テニスのネットの中央は少し低くなっている)、なかなかうまくいきませんけど。

――ソフトテニスのネットの高さで、問題をクリアーできる見込みはありますか。

フェデラーの逆クロスは低くて速い弾道で、ネット中央の低いところをぎりぎり通過しています。ソフトテニスの場合、あれだとネットに引っかかるので、少し浮かせないといけません。ショットのスピードを落とすことになります。そこは難しいところ。ただ、モノにできれば、武器になります。僕の見る限りでは、ソフトテニス界にあのようなショットを打つ人はいません。

――フェデラーは、片手バックハンドで軽く打ち返しているように見えます。

あれはパワーではないと思います。リズム、タイミング、バランスが良いんでしょうね。この3要素は大事です。

――ソフトテニスにも応用できますか。

間違いなくできます。ソフトテニスでも生かせる技術です。あと、ゲーム運びなども参考になりますね。ただ、硬式のプレーを見ていて、これはソフトテニスでは難しいと思うことはあります。角度のついたショットなどは、ネットの真ん中が低くくないと決まりませんから。

2017全豪決勝のフェデラー(Getty Images)

2017全豪決勝のフェデラー(Getty Images)

まずカラダの動かし方を覚えた

――硬式テニスのトップ選手にヒントを求めるようになったのは?

中学生の頃、硬式を初めて生観戦したのが、興味を持ったきっかけでした。確か中2か中3の頃、楽天ジャパンオープンを見に行ったのですが、間近で見ないと、分からないこともありますね。カラダの使い方などは、純粋に「すごいな」と思いましたし、ソフトテニスとも共通するものがありました。目の前で見ると、イメージをつくりやすいです。

――フェデラーの「回り込み」、「カラダの使い方」をマネするためには、どのような練習をすればいいのでしょうか。

基本動作の反復ですね。「回り込み」は足の使い方が大事です。最初は手投げですぐ近くで投げてもらい、自分がイメージしている動きで打てるようになるまで練習します。少しできるようになったら、投げる距離(回り込んで打つための移動距離)を徐々に伸ばしていきます。カラダに動きが染み込むまで、繰り返し、練習するしかないです。

船水颯人のバックハンド

船水颯人のバックハンド 写真:川口洋邦

――フェデラーは「リズム」が良いという話でしたが、練習でリズムを養えるのですか。

僕は小学校の頃からコーディネーション・トレーニングをしてきました。そのおかげか、頭で思い描いたようにカラダを動かすことができます。ゴールデンエイジと言われる小学生年代に神経系のトレーニングをこなしたことがプラスに働いているのでしょうね。意識しなくても、無意識にカラダが動きます。

――印象に残っているコーディネーショントレーニングはありますか。

ラダートレーニングはよく覚えています。そのほかは、遊びのような練習ばかりでした。基本的な「一本打ち」などのメニューはほとんどなかったです。いま思えば、敏捷性などを鍛えるようなトレーニングが多かったかもしれません。ラケットで風船を打ったり。だからか、試合ではあまり勝てなかったですね(笑)。

それでも、中学生からは徐々に勝てるようになり、高校になると、もっと結果が出るようになりました。逆にテニスの技術練習ばかりしてきた人が、伸び悩むのも見てきました。技術練習を積み重ねることを否定しませんが、カラダを自由に動かせるようになることは大事だと思います。

――カラダをスムーズに動かせる船水選手でも、フェデラーの動きは難しいのですね。

ホント、何気ない動きなんですよ。難しいショットを簡単に打ってしまうのがフェデラーの魅力なので。相手に与える精神的なダメージは相当でしょうね、ベストショットをいとも簡単にリターンされれば……。フェデラーは、すごいことを普通にやっています。コートを支配するようなゲームの組み立てなど、まさに僕の目指すべきところです。

船水颯人、技術のマスター法⇒基本動作の反復
①手投げでイメージ通りに打てるように
②徐々に打つ前の移動距離をのばしていく
③カラダに動きが染み込むまで繰り返す!

次回#05は2月9日(木)に公開予定です。

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取材・構成◎杉園昌之 インタビュー写真◎阿部卓功