前回、前々回に続き、イメージトレーニングの実践編として、私が指導している、ある中学校のサッカー部の取り組みをソフトテニスに応用しながら紹介していきます。
1.練習前と練習後に日誌をつける
そのサッカー部では、練習前と練習後に練習日誌をつけています。日誌は練習の『予習』と『復習』です。練習前の日誌には、その日に習得したいプレーのイメージを図で描きます。さらに「シュッ」「ポン」「パシン」「ドーン」といった擬音を書き込んでいます。リズムや音を使ってノートに書くと、どんな軌道か想像できますし、ペアとイメージの共有もしやすいですからね。練習前に擬音を使って練習内容をノートに書く=五感を使ったイメージトレーニングをしているのと同じです。
2.目を閉じて脳内にイメージ
その後、ゆっくりした曲をかけて寝転がり、部屋を暗くして、目を閉じます(2分半~3分)。リラクセーションをしてからイメージトレーニングをすると、2倍~80倍効果が上がると言われています。リラックス状態で、習得したいプレーのイメージのスローモーションで脳内に描き、次に起き上がって、カラダを動かしてスローの動きをやってみます。その後、実際のスピードで行いましょう。
3.スローモーション→素振り→実際に打つ!
続いて、ソフトテニスの場合はラケットを使って、実際のスピードで行います。まだボールは使わず、ボールの感触を「パン」「パシン」とイメージしながら打ってみるのです。そして最後に、実際にボールを使って打ちます。
4.練習の合間は「イメトレ→カラダを動かす」
イメージトレーニングは、練習中に行っても効果的です。サービス練習の合間に、ポンポンとボールをついているとき、頭の中でサービスを思い浮かべ、それから実際に打ちます。イメージ→カラダを動かす→イメージ→カラダを動かすの繰り返しです。練習前にイメージトレーニングの時間が取れなくても、これならできますね。
イメージトレーニングには右脳を使います。右脳は絵や音楽、運動など、視覚的な情報を担当し、左脳は会話や読み書きなど、論理的思考を担っています。スポーツでは、右脳を優位に働かせることが大切です。それにはリラックスすることです。時間に追われていたり、イライラしている状態では、焦ったイメージが浮かんでしまいますし、右脳を使ったいいイメージトレーニングはできません。
【おまけ】こんなイメージトレーニングもおすすめです
未来日誌
試合で勝ったと想定して日誌を書く。「○日の試合は、これこれこういう展開になって、試合中こんなことが起こって、こう対応策をとって、このように勝てた。みなさん、ご声援ありがとうございました」といった文面で。
優勝インタビューのシミュレーション
「優勝おめでとうございます」「試合の感想は?」の質問に、優勝したつもりで答えを捻り出す。勝ったときのイメージが頭の中でつくることができる。
ソリューションバンク
マイナス思考のイメージ(やられそう、負けそうetc.)が浮かんだら、「こうすれば逆転できる」「こうすれば優位になる」といった対応策のイメージをたくさんストックしておく。すると、本番に何か起きても「OK、想定内」と思える。
東海大一中(現・東海大学付属翔洋高等学校中等部)サッカー部時代に全国優勝を経験。東海大一高ではサッカー部主将、東海大学進学後、高妻容一研究室にて応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)を学び、現在はスポーツだけでなく、教育、受験対策、ビジネス、社員研修など、さまざまな分野でメンタルトレーニングを指導している。2012年、メンタルトレーニングを広く伝えるために「株式会社メンタリスタ」を立ち上げる。著書に『クリスチアーノ・ロナウドはなぜ5歩下がるのか~サッカー世界一わかりやすいメンタルトレーニング』(フロムワン)、『勝つ人のメンタル~トップアスリートに学ぶ心を鍛える法』(日経プレミアシリーズ)。年間約250本の講演活動を行っている。