【2015高校選抜】丸山海斗、鬼気迫るスマッシュ
WEB特別企画・センバツを振り返るVol.1 文◎八木陽子
2017年の全日本高校選抜が3月28~30日に愛知県名古屋市・日本ガイシスポーツプラザで行われる。ソフトテニスマガジン・ポータルでは、WEB特別企画としてソフトテニス記者の八木陽子氏による『センバツを振り返る』をソフトテニス・マガジンの秘蔵フォトとともにお届け。第1回は、2015年準優勝・上宮高キャプテン、丸山海斗のヒストリー。
※学年はすべて2015年3月当時
小学生から全国区・内本/丸山、集大成の1年のスタート
2015年春の全日本高校選抜は〝選抜制覇″最後のチャンス――。
当時上宮高2年・内本隆文/丸山海斗にとって〝高校生活最後の選抜″だった。小学生時代から全国屈指のペアとして活躍してきた2人は、当然ながら、来る2015年の新シーズンを集大成の一年と位置付けていた。
毎年、選抜の数日前に開催される全日本私学選抜大会。私立高校が参加する選抜の前哨戦といえるこの大会で、上宮は、チームの大黒柱の内本/丸山を崩す作戦をとった。
団体戦はどのチームも選抜に向けての様子見でありながら、上宮は4強入りを果たす。エースペアを崩すこの作戦の意味を、内本も丸山もよく理解していた。団体戦は2ペアが勝利を挙げなければ、勝ち進むことができない。チームとして日本一を成し遂げるために、内本、丸山それぞれが、別のチームメートとペアを組み、白星を挙げることが絶対条件だった。2人は、これまで以上にチームを、ペアを力強く牽引していくことが求められた。
ベースライン近くまでスマッシュを追った
選抜本番、第9シードの上宮は2回戦から登場。初戦の神辺旭戦は、3番の池田侑生/岩本修汰はファイナル負けとなったが、1番の1年ペア・北野敏希/廣瀧開、2番に座った内本/丸山が勝利し、16強入りを果たす。
そして続く3回戦から、内本が岩本と、丸山が同学年の色摩貴紀と組むオーダーとなった。2番の1年生ペアがファイナル負けながらも、1番の内本/岩本、3番の色摩/丸山が勝利し、またも②-1での勝利。トーナメント前半とはいえ、けっして楽ではなかった。
準々決勝、相手は第1シードの東北。前シーズンまでチームの要だった船水颯人らが卒業したものの、東北は土地柄、インドアの戦いには長けている。上宮1番には1年生ペアが、東北の大将、永井宏典/土井達人に0で完封負け。しかし、続く2番・内本/岩本が1でタイに戻す。
そして3番勝負、色摩が必死につなげ、丸山はベースライン近くまでスマッシュを追う。それもことごとく。ファイナルまで競り合った激戦は⑧-6で上宮に軍配が上がった。
決まるまでたたき続ける
インドアの戦いとなる選抜で勝ち上がるためには、前衛のスマッシュ力は必須要素だ。どのチームもスマッシュ力を強化して臨んでくるため、例年、見ごたえのあるスマッシュの応酬を見ることができる。
この選抜での丸山のスマッシュ力は抜きん出ていた。そこには力量+気持ちがこもっていたからだ。「絶対に勝つ」という意気が、丸山の存在をひときわ光らせていた。
3回戦まで、すべて②-1で勝ち上がってきた上宮。準決勝は直前の私学選抜大会を制し、優勝候補の筆頭ともいわれていた岡山理大附を3回戦②-0で破った尽誠学園と激突した。
1番・内本/岩本が一進一退の展開のゲームをファイナル⑦-3。丸山と同級生の前衛・岩本が、丸山に負けじとファイナルでも動き、攻守に絡んだ。しかし、第2試合は尽誠学園の要・中平慎吾/藤井祥太が安定感あるテニスで勝負を振り出しに戻す。
またも色摩/丸山が3番勝負へ。「(丸山は)負け出しても勝負できる」と語った尽誠学園の森博朗監督は、丸山のスマッシュを警戒し、自チームの西村匠平/西田達矢の2人をベースラインに下げる作戦をとった。それでも、上宮は、色摩がつなげば、丸山が何本でもスマッシュを追い、決まるまで叩き続けた。その結果、G④-0。決勝への扉を開けた。
計り知れない悔しさがインハイで爆発
決勝の相手は、私学選抜大会の4強決め(②-1で上宮が勝利)でも対戦した三重。三重もまた、前回大会の出場を逃し、名門として屈辱を味わい、はい上がってきただけに、互いの勝利への想いは強かった。
三重の全陣形型ペア・橋本旭陽/遠藤爵由に対し、上宮・北野/池田の並行陣が、G2-3からの逆転勝ちでチームの士気を高める。しかし、内本/岩本が、三重1年の実力ペア・田邉雅人/内田理久の、無心のテニスに完封負け。
大一番に、またも色摩/丸山が挑む。一方、三重の佐野間秀道/中村真は、この日初登場。3回戦以降、3度の3番勝負をものにしてきていた上宮に分があるかと思われた――。
何が起こるかわからないのが勝負でもある。佐野間/中村は、相手のレシーブポーチなど、丸山のスマッシュが繰り出される前に勝負に出た。〝ラリーになれば、ロビングを上げてしまえば、丸山はどこまでもスマッシュを叩きにいく″――それだけ丸山に対する警戒が強かった。
もちろん丸山はスマッシュにとどまらず、ボレーでも応戦する。ところが、三重ペアは集中力も高く、その怒涛の仕掛けの前に上宮は1で屈した。こうして、選抜での上宮の挑戦は、幕を閉じた。
あと一歩までのところでついえた選抜制覇の夢。その悔しさは計り知れない。だが、数か月後のインハイで上宮が爆発。インハイ団体V、内本/丸山が個人制覇を達成――この選抜の敗戦があったからこそ、さらなる頂へのぼりつめることができたのかもしれない。
相手後衛のロビングをすべて叩いてしまうのではないかと思わせた、あの選抜での丸山の凄まじいスマッシュ。包囲網を打ち破る、その一打一打には、意地と執念が深く宿っていた。