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駆け引きとは、相手が嫌だと思うことを探り続ける努力

あえて「ハマった」演技も効果あり

前回、ミスしたときは切り替えが大事とお伝えしましたが、対戦相手との心理的な駆け引きによってミスが起きた場合、あえて表情に出し、「ハマった」という演技をするのも手です。試合では「ここぞ」というときのために、相手の油断を探り続けていきましょう。

駆け引きで大事なのは、イライラしたら負け、相手を敵視してはいけないということ。試合中は、駆け引きを楽しめるくらいの心理状態が理想です。そのためには、戦略的な思考、工夫、考えを持つ必要があります。

具体的には、相手の良さを出させないためにはどうしたらいいかを考え、相手のストロングポイントを消し、相手が嫌がることを探すことです。局面や時間帯、スコアによっても、戦い方や間の使い方は変わりますが、常に相手を感じて相手の思考を探る努力をしましょう。「いま何を考えているのか」「今日のテーマは何なのか」「こんなことを意識しているな……じゃあこうやっていこう」、というように。それには、テレビや実際に試合を見ながらのイメージトレーニングも有効です。技術面以外にも、心理面の駆け引きを分析してみましょう。

練習でも、駆け引きのテクニックを上げることはできます。ゲーム形式の練習後に対戦相手のチームメートと「ここどうだった?」「あのときどう思った?」と心理描写や心理面の駆け引きについて話し合います。練習試合を積極的に行って、他校の生徒と意見交換してみるのもいいですね。テニスノートには、自分たちの「技術面・体力面・メンタル面・戦略面」にプラスして、相手の「メンタル面・戦略面」という項目もつくって分析します。

風や雨でイラつかない、むしろ利用すべし

駆け引きでは、自然も味方につけましょう。風や天候、コートの状態で戦い方が変わりますが、「いつものプレーができない」とイライラするのではなく、むしろ「利用してやる」くらいにとらえてみる。足場が悪いところに落としてみたり、風を利用してラリーを振ってみたり。そういう積み重ねが、相手の嫌なことを探るという考えにつながっていくと思うのです。

中学年代の場合、心理面の駆け引きで上回りたいのならば、強い相手とやると面白いです。なぜなら、中学生の強い選手というのは、スピードや筋力、身体能力頼みで、肉体のポテンシャルに任せて、あまり考えずに打っているタイプが多いから。筋力だけでゴリゴリ来る選手ほど心理戦術にハメやすい。

このように、試合中の駆け引きは、いろいろな情報を集め、それを試してみることです。弱い相手とやるときは、自分が役者になって、相手がどう出てくるかシミュレーションするのもいいですね。

メンタルトレーニングお悩み相談室

Q.第1試合の理想的な入り方を教えてください。
(中2男子・スマッシュ大好き)

A.【大儀見さんの回答】
いつもと同じウォームアップをしましょう。事前にルーティンをつくっておいて、いつも通り試合に入ります。そして、ルーティンが崩れたときの準備もしておきます。雷が鳴って中断した場合はこうするなど、ソリューションバンクをつくることですね。第1試合という条件は相手も同じ場合が多いですから、向こうも緊張しているはずです。相手の顔を見て緊張がうつらないように、緊張している相手を楽しめるくらいになりましょう。スマイル&リラックスです。

ソフトテニスの場合、最初の試合は午前中に行われることが多いと思いますが、人間は午前中の方が緊張が強いんです。午後の方がリラックスします。つまり、午前中は、対戦相手も、ペアも、レフェリーも、観衆も、指導者も、保護者も、みんな緊張が強い状態です。そんな時間帯に、ウォーミングアップから軽快に楽しめれば、いい状態で試合に入れると思うんです。

そのためには、誰よりも早く会場に入りましょう。そうやって、会場の雰囲気に徐々になれていきます。人がいっぱいいて「さあ始まるぞ」という雰囲気のところにいきなり入っていくのは、誰しもビックリしてしまうものです。

朝早く会場に入っていれば、いろいろな人とあいさつを交わします。人間は長年の人生経験で「おはようございます」のあいさつで少しずつスイッチが入るようにできているんです。笑顔の「おはようございます」だけで、いいリラックスにつながります。あいさつも先手必勝ですよ(笑)。

会場に早く行ったら、コートを散歩し、会場の手伝いをしたり、それからいつもどおりの自分の時間にしていけばいい。散歩はコートと友達になる時間です。このプロセスを踏めば、どこに行ってもホーム同然です(笑)。

著者Profile 大儀見浩介●おおぎみ・こうすけ
東海大一中(現・東海大学付属翔洋高等学校中等部)サッカー部時代に全国優勝を経験。東海大一高ではサッカー部主将、東海大学進学後、高妻容一研究室にて応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)を学び、現在はスポーツだけでなく、教育、受験対策、ビジネス、社員研修など、さまざまな分野でメンタルトレーニングを指導している。2012年、メンタルトレーニングを広く伝えるために「株式会社メンタリスタ」を立ち上げる。著書に『クリスチアーノ・ロナウドはなぜ5歩下がるのか~サッカー世界一わかりやすいメンタルトレーニング』(フロムワン)、『勝つ人のメンタル~トップアスリートに学ぶ心を鍛える法』(日経プレミアシリーズ)。年間約250本の講演活動を行っている。
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