全日本シングルスではスピードテニスで2年ぶり2度目のVを果たした船水颯人。「角度をつけた速いボール」は、2016年のアジア選手権シングルスでキム・ドンフンに「やられた」ショットだったという。ただし、いいショットを打つだけでは勝てない、駆け引きの中で狙ったショットを決めるのが大事とも。
ソフトテニスマガジン・ポータルでは、船水颯人の2018年ジャカルタ(JKT)アジア競技大会に向けた取り組みをインタビュー連載で追っていく。船水颯人『JKTへの道』第16回は再び、全日本シングルスについて。
船水颯人/ふねみず・はやと 1997年1月24日生まれ、20歳。青森県出身。身長170㎝、右利き、後衛。黒石烏城クラブ(小1)→黒石中→東北高→早稲田大3年
角度のあるボールに「お手上げ」
――全日本シングルスで手応えをつかんだショットについて詳しく聞きたいと思います。
相手の手が届かないところに打てましたね。昨年のアジア選手権でキム・ドンフン(韓国)が打っていたショットなんです。角度のあるボールを打たれて、もうお手上げで。実際に対戦したとき、僕自身が「届かない」って、実感しましたから。
僕は守備範囲の広さが強みで、ノータッチでやられることはほとんどないのですが、あのときは拾えなかった。ドンフンにあんな形で負けて、僕もあのショットを習得しようと。「やられた」という感覚があったので、試行錯誤しながら練習を積んできました。
――その成果が出たわけですね。
今回はたまたま打てただけだと思います。まだ、安定して打てるわけではありません。もっと練習しないと。
――取り組んできたことが結果になって表れ、自信を深めたのではないですか。
自信にはなりました。新しい戦い方を試す中で、結果を出せましたから。引き出しが増えました。これまでのベースに、プラスしていこうと思っています。
プレーの幅をもっと広げていかないと
――優勝した大会ですが、あえて聞きます。課題は見つかりましたか。
課題はあります。もっと前に出てもよかった。ボレーなどのネットプレーでポイントを取れていれば、試合を楽に運べたと思います。試合中も何回も前にいこうとしていたのですが、躊躇する場面がありました。
プレーの幅を広げていかないと、相手も僕のことを研究しますから。駆け引きしていかないと、僕は勝てないので。
――駆け引きする上で大切にしていることは?
直感です。とはいえ、僕は考えすぎてしまうタイプで……。逆を読んだつもりでも、相手にそのまま素直に打ち返されたりします(笑)。
――わずか数秒の駆け引きの間に、頭の中では、いろいろと考えているのですね。
相手の表情を見て、疲れていれば、相手の足を動かしますし。だからこそ、僕は表情をいつも変えないようにしているんです。
この前、試合中に足をつったのですが、そのときも相手にばれないようにしていました。ボールを拾いに行くときに、見えないようにアキレス腱を伸ばしたり(笑)。タイムを取ったらダメだと思い、一気に試合を進めました。たぶん、相手は最後まで気がついていなかったと思いますよ。
――相手との駆け引きは大事ですか。
シングルスの場合は特にそうですね。どれだけいいショットを打っても、それだけでは勝てません。駆け引きしながら、狙ったショットを決めないと。
※次回は6月15日(木)に公開予定
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