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【張人対談・ガットを語ろう。】テンションについて[後衛編](廣島敦司×須藤博人)

ガットの商品理解と張りの技術を磨き、老若男女のソフトテニスを全国でサポートする「張人(はりびと)」によるガット談義。今回は、東北高校で選抜3位などを経験し、中央大を経て地元宮城のショップへと戻ったウィナーテニスショップの須藤氏が登場! 現役時代の経験も交えながら、後衛のテンションについて廣島氏と語り合います!
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廣島敦司氏
GOSEN 販売促進課 1981年3月27日生まれ。ストリンガー歴14年。静内第三中→北海道工業高→中京大。前衛。大学時代にはジュニアジャパンにも選出された元トップ選手。

須藤博人氏
宮城県 ウィナーテニスショップ
1984年12月21日生まれ。ストリンガー歴6年。高森中→東北高→中央大。後衛。中学からソフトテニスを始める。東北高時代には選抜3位など。

後衛といえば、「ガッチリ硬く」の時代から変化

須藤 今回、後衛のテンションがテーマですが、僕が高校、大学でプレーしていたころ(15年ほど前)に比べると、前衛後衛問わず全体的にテンションは下がっていると感じます。

廣島 須藤さんの高校時代からのプレイを私はストリンガーとして見ていますが、ハードヒッタータイプではありませんがボールが速く、本当にバランス良くできるタイプの後衛でしたよね。現役のころガットは実際何ポンドでした?

須藤 35とか36ですね。

廣島 まあまあ硬めですけど、極端に硬いわけではないですね。私の(20年ほど前の)高校、大学時代と比べても、いまはすごく下がっています。私は前衛ですが、現役時代はとにかく硬く、飛ばなきゃいいと、40ポンド近くで張っていました。

須藤 いまそんな高いテンションで張るのはほとんど聞かないですね。

廣島 いまはラケットが変わりましたし、当時は何も分からず硬けりゃカッコいいだろという風潮で(苦笑)。

須藤 僕が現役のときも、今とはラケットの素材も違いましたし、後衛といえばガッチリ強く張って、しっかりラケットを振るというもので。ただ、硬く張るとどうしても切れるのも早かったです。当時はそんなにガットについて深く考えていませんでした。

廣島 自分たちが選手のときは、ガットについてそこまで考えていなかったですよね。

須藤 今ほど大会会場ですぐ張れる時代でもありませんでしたし。以前はガット張りをもっと単純なものだろうと考えていたのですが、ストリンガーになったら、ものすごく奥が深いと気が付きました。

廣島 昔はソフトテニス業界自体、そこまでの意識はありませんでした。「すぐ切れるならこれ」「飛びすぎたらテンションを上げなさい」という大まかな対応で済ませていた。ここ10年くらいで考え方が変わって、すすめ方も変わってきました。

大会会場で、ストリンギングで選手をサポートする廣島氏

テンションは、テンションだけで語れない!

須藤 ここ2、3年でも、高校生の全国大会に出る後衛の選手たちが、少し前よりテンションは下がってきている感じがします。

廣島 今多いテンションは28とか。

須藤 27、28は多いですね。ラケットのフレームが硬くなってきているから、硬いラケットに硬いガットを合わせてしまうと硬くなりすぎて。ガットの種類には繊維が1本で構成されるモノフィラメントと複数使ったマルチフィラメントがありますが、硬めのラケットに(やわらかく食いつきが良い)マルチフィラメントを張る後衛は増えているような感じはします。

廣島 そうだと思います。

須藤 硬めのラケットにマルチをやわらかめに張ることによって、ラケットの性能を出しつつも、ガットのいいところを出せるというバランスが、今成り立っているのかなと。その結果、全体的にテンションが下がっているような印象があるのではと個人的には思っています。

廣島 この傾向は続きそう……。振り返ると、昔は全体的に柔らかくてしなりやすいラケットが多かった。逆にガットは、テンションをちょっと高くし、コントロール性を高めてバランスを取っていました。それがいまは、ラケットのフレームが高性能になり頑丈になっているので。ガットのやわらかさ、マルチのやわらかさで、お互いのいいところが出てくる。

須藤 テンションて、テンションだけで語れず、ガットの種類、ラケットの性質もかかわってきますね。

廣島 そのバランスを判断するために、コミュニケーションが大事になります。たとえば、「アウトするから5ポンド上げるように言われたので」という女の子が来たら、話をしてみるとそんなにボールが速くない場合は、そこまで上げないほうがいいケースもある。

須藤 そういうとき、テンション以外で対応する、と。

廣島 ストリングの種類の選択を見直したり、張り直すだけでも違います。張り替えて3か月もたっていたら、ガットが伸びきって本来の性質を生かせていない可能性もあります。同じテンション数値でも張り直すだけで全然違う結果になります。そういう部分は選手の皆さんにもまだ浸透しきっていないですね。

一番大事なのはコミュニケーション

須藤 学生時代、僕は張りたてがすごく好きで、大会前日にお店に張り替えにいって、そのまま袋から出さずに、試合会場の朝一の練習で初めて使っていました。こういうのも選手の好みですよね。

廣島 私は大会現場で張ることがメインなのですが、現場だとやはり張ってすぐ使うという選手がほとんど。トッププレーヤーほど張りたてで使う選手が多い。

須藤 「30ポンドで張ってください」と言われても、大会で張ってすぐ使いたいですという30ポンドと、普段お店に来て持ち帰って使っていく30ポンドとは張り方が変わる場合もあります。トップ層のガットはほんとに、選手自身と話して、要望を聞かないと。同じポンド数で張っても、選手の期待と違うことが起きうる。

廣島 ガットの本来の実力を出すのは張りたてがベストですが、トップ選手ほどの張替え頻度のない場合、少し使ってなじんでからが良いという声も根強い。あらかじめ伸びることを想定しておいて、ちょっと強めに張って、長く切れるまで使い続ける。

須藤 中学生くらいだとなかなか頻繁に変えられなくて、なじんできてちょうどいいのがいいという子も多いですね。

廣島 そうなんです。そこがやっぱり難しいところ。会話のなかで探っていくしかありません。

須藤 中学生に関しては、中1で何も知らず始め、中2になるとガットは硬いのが強いみたいな考え方を持っている子はいっぱいいます。ガットを張る以上は、子供たちにそういう単純なものではないよと教える義務はあると思う。

廣島 お店ではお客さんからどんなことをよく聞かれますか?

須藤 後衛前衛問わず多いのが「このラケットには何ポンドが合いますか」という質問です。これって一概に言いきれる回答はなくて。

廣島 多いですね。実際には、このラケットこうと言うより、その人のプレースタイルとか、大会がいつあるのかとか、今のものを張ってからどれくらいたっていて、その感触をどう感じるのか、細かく聞いてみる必要があります。

須藤 そうなんです。日ごろからプレーを見て知っているような選手であれば、「いままでこうだったからこのラケットに変えるなら~」のように相談できる。

廣島 やはり実際に選手のプレーを見られれば一番早いですよね。

須藤 まずは話すことから。選手とコミュニケーションして、たとえばハードヒッターなら耐久性が良くてテンション少し固めで張ってみようかと話をします。逆に、うまくボールを回しながら展開していく後衛だと分かれば、球持ちのいいタイプをすすめて、打つタイプの後衛の子よりはテンションを落としてコントロール重視で張ってみようかという話をする。張り始める前の話し合い、希望をくみ取るのが一番大事なところかなと思います。

須藤氏は地元に根付いたお店で、ガットへの知識を広めることに尽力している

取材・構成 深作友子 写真 井出秀人
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