地元青森の講習会で「世界一」という夢に出合った船水颯人。普通の小中学生だったという颯人が、大きな夢を抱き続けられたのは、トップ選手の試合を間近に見て、憧れと「ああなりたい」という向上心を持ったからだという。夏大会シーズン、チャンスがあればぜひ試合会場へ。
ソフトテニスマガジン・ポータルでは、船水颯人の2018年ジャカルタ(JKT)アジア競技大会に向けた取り組みをインタビュー連載で追っていく。船水颯人『JKTへの道』第21回は雨の日の練習、試合を生で見ることについて。
船水颯人/ふねみず・はやと 1997年1月24日生まれ、20歳。青森県出身。身長170㎝、右利き、後衛。黒石烏城クラブ(小1)→黒石中→東北高→早稲田大3年
少し休むと、モチベーションが上がります
――関東の梅雨は明けましたが、今回は雨が降ったときの練習についても聞きたいと思います。
雨のときも、できる限りボールを触るようにしています。少しの雨でも、試合は中止になりませんからね。滅多にない環境だと思い、集中して練習しています。雨の中でいかにプレーするかは大事。人工的に雨を降らすことはできないので、そのときにしかできない練習だと思います。雨でリズムを崩して、試合に負けたくないので。
――感覚はそこまで変わりますか。
ボールのはね方などの感覚が違います。まともに打てませんから。雨の中で練習して、慣れることも準備のひとつです。
――雨の試合で気をつけることは?
足元が滑るので、角度のついたボールを打って、走らせたりとか。当然、自分の足も滑るから、そこは気をつけています。だからこそ、雨の中で打ち返す練習をしているんです。
――室内ではどのような練習をするのですか。
雨が降ったときは、そこまで室内で練習しないです。屋外で風邪をひかない程度にこなすと、引き上げることが多いかな。
少し休むと、「またテニスをやりたい」というモチベーションが高くなってきますし、ちょうどいい感じなんです。僕は大学1年のときに、テニスのことばかり考えすぎてしまい、調子を崩してしまったので。
この連載でも話しましたが、不安になって練習量を増やし、コンディションを崩しました。その反省から、雨の日はなるべく軽めにして、カラダを休めるようにしています。「気持ちを抜く」ことも大切。リフレッシュは必要です。
――今はコンディションの管理を徹底していると思いますが、小、中、高の頃はどうだったのですか。
練習すればするだけ、うまくなれると思い込み、必死にやっていましたね(笑)。普通の小、中学生でしたよ。中学2年生までは、大会でも勝てなかったですし。
それでも、日本代表になり、世界で勝ちたいという目標だけは持っていました。その強い気持ちがあったから、地道にトレーニングを続けることができたんだと思います。
夢を与えてもらったので、夢を与えられるように
――大会であまり結果を残せなかった普通の中学生が、高いモチベーションを持ち、日本代表を目指せたのはなぜですか。
ソフトテニスのトップ選手を生で見る機会があったことも影響しています。大会の試合観戦だけでなく、選手たちが講習会で青森に来てくれたりして、身近に感じることができました。その記憶はずっと残っています。
いま僕は逆の立場になりました。日本代表に選ばれ、小中学生に見られる存在です。だからこそ、「この人のようになりたい」と思われるような言動を取らないと。自惚れてはいませんが、立場は自覚しています。僕も幼い頃に夢を与えてもらったので、次は僕が夢を与えられるようになりたいです。
――昨今はどこでも、インターネットの動画でトップ選手のプレーをチェックできる時代になりました。
実際に間近で見ると、また違うと思いますよ。チャンスがあれば、ぜひ会場に足を運んでみてほしいです。行かないと、分からないことはありますから。
目の前で見ると、驚くと思います。その感性、気持ちが大事かなと。僕も最初は憧れているだけでした。そこから、「あの人のようになりたい」という思いを抱き、「もっと練習しよう」という向上心が生まれました。
9年前に天皇杯(全日本選手権)が地元の青森で開催されたとき、僕は決勝でプラカードを持つ係をしていたんです。黄色の服を着て、NHKの放送にもばっちり映っています(笑)。
そのとき、鹿島(鉄平)さんと中本(圭哉)さん(ともに当時早稲田大)のプレーを見て、子どもながらに「すごい、かっこいい」と思いましたから。この気持ちですよね。本物を生で見ると、きっと感じるものがあるはずです。
2008年天皇杯結果
※次回は8月に公開予定
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