東北高時代に自分で考えることの重要性に気づいたという船水颯人。シングルスでも頭角を現したこの時期、身長が低くても勝つために、武器であるフットワークに磨きをかける。そして今回は、20日に開幕する天皇杯の話も。
ソフトテニスマガジン・ポータルでは、船水颯人の2018年ジャカルタ(JKT・ソフトテニス競技はパレンバンで開催)アジア競技大会に向けた取り組みをインタビュー連載で追っていく。船水颯人『JKTへの道』第30回は連覇がかかる天皇杯について、および小中高での取り組みを振り返る。
船水颯人/ふねみず・はやと 1997年1月24日生まれ、20歳。青森県出身。身長170㎝、右利き、後衛。黒石烏城クラブ(小1)→黒石中→東北高→早稲田大3年
――天皇杯が直前に迫ってきました(10月20~22日)。
今シーズンはダブルスで結果を残せていないので、勝ちたいですね。ただ、その思いが強すぎてマイナスに働くといけないので、いまはなるべく気にしないようにしています。最大限の準備をして、負ければ、それは仕方がないって。結果は付いてくるものです。だから、大会前から「優勝してやる」と思わないようにしています。いつも言っていますが、僕の場合、勝ちにこだわりすぎると、気持ちに焦りが生まれ、プレーにも影響するので。
――2連覇は意識していますか。
していないですが、天皇杯に懸ける思いはあります。今シーズン、練習してきたことの集大成ですからね。個人的に最も重きを置いている大会と言ってもいいです。
練習は考えて、本番は直感を頼りに
――船水選手は意識が高く、自主性を持って練習に取り組んでいると思います。いつ頃から自ら考えるようになったのでしょうか。
僕の場合、指導者の方から「ああしろ、こうしろ」と押さえつけられるような指導を受けたことがありません。小学生時代からずっとそうです。高校入学当初はがむしゃらに球を打つだけでしたが、少し慣れてくると、考えて練習する重要性に気が付きました。学年が上がるたびに、その思いはどんどん強くなりましたね。
――きっかけはあったのですか。
当時の東北高校は、練習量は多いほうではなかったと思います。量より質を求めていたのだと。練習メニューの一つひとつの時間が短く、球を打つ回数も限られていました。そうなると、自然と集中力は増します。何も考えずに各練習をこなしていくと、意味がなくなると思うんですよね。そのおかげで、より自主練に対する考え方や意識も変わってきました。「練習では頭が痛くなるほど考えて取り組み、本番では直感を頼りに」というのが僕の考え方です。
――なぜ、高校生がそこまで意識を高く保つことができたのでしょうか。
周りに僕よりもうまい人がたくさんいたので、「何とか食らいついていこう、何とか追い越してやる」という気持ちがあったからです。高校に入学したばかりの僕の実績は、全中で個人3位になっただけでしたから。
「(ドンフンと)そんなに身長変わらないじゃん」
――周りのうまい選手を追い越すために、何をしたのですか?
何をすれば、追い越すことができるのかを考えました。闇雲にトレーニングをこなしたわけではありません。それぞれ自分の取り組むべき課題があると思います。長所を生かすこともそうです。僕は身長がずっと低かったのですが、フットワークには自信を持っていました。
これは前回の連載でも話した小学生年代からの積み重ねがあったからこそです。自分のスタイルをつくる上で、フットワークは基盤になっています。
――ずっと低かったという身長は、小中学生の頃は何センチくらいだったのですか。
中学入学時は140センチくらいでした。それでも、シングルスでは150センチくらいの選手にも勝てることが多かったんです。素早いフットワークを生かし、よく拾って返していました。徐々に自信をつけていったと思います。「シングルスが得意だ」と自分に言い聞かせていましたね(笑)。背が低くても、フットワークがあれば、勝てるぞって。
――競技をする上で、身長はほしかったですか。
もちろん(笑)。高校の頃には「もう身長は伸びないな」と分かりましたけど(笑)。正直、いまでも大きい選手がうらやましいです。小学校6年生のときに篠原(秀典)さんを初めて見て、180センチ近くあり、純粋に「大きいし、カッコいいな」と思いました。
――それでも、いまは全く身長差を苦にしていません。
身長が低くても、勝てると思ってます。もちろん多少のデメリットがある半面、メリットもたくさんあると思うんです。
高校2年時に、ヨネックスワールドチャレンジが宮城であって、キム・ドンフンとキム・ビョンジュンが来てたんですよ。僕も呼んでいただいて、そこで初めてドンフンと対戦しました。ボールの質、スピード、精度がすごく、とても印象に残っています。世界一のプレーヤーはこんなにもすごいのかと感じたと同時に「アレ、そんなに身長変わらないじゃん(笑)」って。上のレベルにいくと、大きい選手が勝つと思っていたのですが、そうでもないぞって思いました。
いまは僕も身長の高い選手と戦っていますし、勝たないといけません。カラダの大きさが有利に働くこともありますが、それだけではないはずだと思っています。人それぞれプレースタイルが違って当たり前だと思いますし、より自分のプレースタイルを確立させつつ、常にもっと強くなれる方法を追求することが大事だと、僕は思いますね。
※次回は10月26日に公開予定
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