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元実業団選手のYouTuberあゆタロウ「小中学生がソフトテニスを始めるきっかけになる動画をつくりたい!」

日体大出身のあゆタロウ。大先輩である小林幸司選手の表紙に「怒られないかな」とちょっとビビりながら、トレードマークのしゃもじを持ってポーズ。しゃもじは白子のソフトテニス・フェスティバルで優勝したときの賞品で行った広島旅行でゲットしたもの

『【ソフトテニス ドッキリ】もしもオタクが国体選手だったら。。』というポケットウィズとのコラボ動画が100万回再生され、キレキレのプレーぶりで俄然注目を集めているYouTuberのあゆタロウ。昨季まで日本リーグに出場していた元実業団選手だからそれも当然なのだが、なぜソフトテニス選手からYouTuberに転身したのか?

2017年の男子中学生がなりたい職業3位(ソニー生命保険調べ)、親が目指してほしくない職業トップ(筆者の私見です)のYouTuber。安定した仕事をやめてまでYouTuberになった理由は? YouTubeだけで生きていけるの? 老婆心ながら心配になったのであゆタロウさんを直撃しました!

もともと目立ちたがり屋だった

――あゆタロウさんは元日本リーグの選手で、公務員でもあったわけですが、なぜ安定した仕事をやめてYouTuberになったのでしょうか?

きっかけは2つあって、まず日本リーグで勝てなくなり、チームの皆さんがいい方で試合に負け続けても出してくれたんですが、それに申し訳なくなり、2016年度限りで選手を引退したんです。自分の居場所がなくなり、もともと目立ちたがり屋だったのと、ソフトテニスに恩返ししたいという思いがあり、YouTubeにたどりつきました。

編集部に電話をかけてきてくれた翌日、相模原から浜町まで来てくれたあゆタロウ。そのフットワークの軽さもYouTuberならでは。この動画は取材翌日に即アップ。紙の編集者に比べて仕事早っ!

――それでソフトテニスの動画を?

最初はYouTuberっぽい「辛い物食べた」「おもちゃで遊んでみた」とかやっていたんですが、全然数字が伸びなくて(笑)。つい一か月前、YouTuberのポケットウィズさんとコラボしたソフトテニスの動画を公開したら、みんなが見てくれて、反応を返してくれたんです。

最初の頃はどうせ誰にも見られてないと思っていたんですけど、僕のソフトテニスをこんなにもみんなが評価してくれるんだっていうことに気付いて。ソフトテニスやっててよかったな、これからソフトテニスの動画をつくっていこうかなって思いました。

――ソフトテニスを始めたきっかけは?

僕もう完璧に『テニスの王子様』世代です。小学校のとき、すごいデブだったんで、サッカーとか野球をやってもすぐにやめちゃって、そんなとき親戚の人がマンガをくれました。小5から始めて、最初は「なんで白いゴムボール? 練習用かな?」って思ってたんですけど、「ソフトテニスだよ」って(笑)。

中学は関東大会に出たくらいですね。全国とか考えたことのないレベル。高校は地元の伊勢原高へ。2コ上の先輩にいま厚木市役所の石川裕基さん、岩﨑拓斗さんがいて、2006年のインターハイで団体準優勝して、黄金世代と言われていました。僕は変に自信過剰なところがあって、あわよくばレギュラーに入ってやろうっていう感じだったんですが、まあ無理でしたね(笑)。

高2のインターハイに出たのが初の全国(編集部注:個人2回戦敗退)。大学は、自分を試すために日体大へ行きました。1、2年のときは全然下の方で、3、4年は試合に出れない一軍でしたね(笑)。周りがすごいし、学年が上がるにつれて下からどんどんいい選手が入ってくる。大学ではほとんど試合に出られてないです。

――日本リーグの厚木市役所へ。

中学が厚木で、厚木市役所にいた先輩たちから「一緒にやろうよ」と誘っていただいて、やりたいですと。

日本リーグ選手時代のあゆタロウ。ソフトテニス選手として後衛も前衛も経験したという

――社会人になってもソフトテニスを続ける人は少ないですよね。ソフトテニスの日本リーグ男子所属選手は2017年5月時点で64人です。

ソフトテニスしかやってなかったので、好きだったから、純粋に続けていきたいなと。いま思うと、伝える側になってその経験がすごく生きてるんですよね。

例えば、僕のLINE@に中高生からメッセージが1日100件とか多いときは200件とか来るんですけど、「ボレーのコツを教えてください」「バックのコツを教えてください」とか、長文で相談が来たりもします。そういう質問にできるだけ返すようにしていて、僕は高校と厚木市役所のときはレギュラーで、日体大のときは試合に出られなかった。だから、両方の気持ちが分かるんです。トップの選手は出られない人の気持ちが分からないし、そうでもない人はあまり上にいかない。僕は全国のトップにはなれなかったけれど、伝える側としてはいいポジションなんじゃないかと。

撮影で出かける以外は家にこもって編集。動画は毎日アップ

――YouTuberになると伝えたときの家族の反応は?

薄かったですね~。「何それ、フーン」という感じ。僕、行動が早いタイプで、気づいたときには進行しちゃっている場合が多いので(笑)。普通にチャンネル登録してくれました。

――オープンないいご家庭ですね。私の息子だったら、全力で説教ですよ(笑)。

やりたいことやらしてもらっています。恩返しはしないと。僕、中学くらいからこういうところがあって。ミクシィ、ツイッター、フェイスブック…流行のSNSはみんなやって、発信するのが好きなんです。新しいものは全部取り入れたいみたいな。この先、YouTubeが終わるかもしれないけど、いまここで頑張っていれば、新しい次のものにすぐ移れると思うんですよね。

ふいに撮影をし始めるあゆタロウ。取材中も終始カメラを回していた。あゆタロウチャンネルには他にバレーボールが得意なみほたん、野球担当のれんにゃんというメンバーも

――他に周りの反応は?

YouTuberになったもう一つのきっかけを話すと、僕1年ぐらい前から自分のソフトテニスチームをつくっていて、ICクラブというんですが、ソフトテニスを楽しみたいというクラブなんです。土日試合に出られない美容師さんとか、中学でやってたけどクラブチームに入ってしまうとレベルが高くて楽しめないとか、そういういろんな集まりのクラブなんです。スポーツレクリエーションチームで、ソフトテニスも含めていろんなスポーツをやろうと。

そのクラブに専用のテニスコートをつくってあげたいんです。みんなにバカにされているんですけど、そうなったらお金がかかるじゃないですが、計算したら3000万以上かかると思うんです。今のままじゃ間に合わない、僕、結婚もしなきゃいけないしって。安定した人生よりも、何かを成し遂げる人生にしようと、去年11月に市役所をやめました!

――あゆタロウさん、マジメなんですけど、なんかちょっとこう…ズレてますよね(笑)。いい意味で! ところで、専業YouTuberになって、まだ2か月じゃないですか!

そうです、そうです。登録者が伸びたのも1か月前なんですよ。いろんな人が興味を持ってくれて、2月はネットラジオにも出させてもらいます。

――YouTuberの1日のスケジュールは?

10時くらいに起きて、ため撮りしてある動画を12時くらいまで編集します。午後は18時くらいまで撮影。家に帰って、その日に撮った動画を夜中の2時まで編集です。寝て起きて、また朝から編集してと、その繰り返し。撮影で出かける以外は家にこもっていますね。動画は毎日アップしてます。

――どんな動画を?

僕のチャンネルのテーマは「ソフトテニスをやっていない人も見られるオモシロい動画」。ソフトテニスばかりになっちゃうとそれ以外のお客さんが増えないので、週に1本は「飲み配信」でお酒を飲みながらLINEで返しきれない質問に答えています。もう2本はYouTuberっぽい楽しいことをやる。激辛やきそば食べてみたとかですね。あとの4本はソフトテニスの動画を。

――YouTubeで何を発信したい?

ソフトテニスの試合動画はいっぱいある中で、ソフトテニスのバラエティ動画は世に出回ってないですよね。今の小学生とか中学生がスポーツを始めるとなったときに、サッカーがカッコいい、硬式テニスがカッコいいとなるのは分かるんですが、ソフトテニスのイメージをもっとカッコよくしたかったんですよ。小中学生にソフトテニスをやるきっかけを与えるような動画をつくりたいです。

それには、僕がもっと有名になって発信力がつけば、「あゆタロウがやっているからやってみよう」となってくれるかもしれない。ソフトテニスはこんなオモシロいことができるんだと広めるためですね!

スーパーポジティブ!

――最近の動画は10万再生ですが、初期の頃は300回とか、毎日やってそれで落ち込みませんでしたか?

チャンネル登録者もそれぐらいだったし、YouTubeって2年ぐらいやらないと売れないと言われていて。

――『ナゲット1分間に1個なら永遠に食べれる説』とか、ナゲット100個食べて2000回ですよ。ナゲット1個につき20再生じゃないですか!

でもこれ、2000回でうれしかったんですよ。10年やっていて、もっと再生回数が少ない人もいますから。僕は逆にできすぎている感じがします。

――そうでしたか! すみません。

最初はバカにされましたけどね。コメント欄とかで「何やってんの」とかって。

――やりきった先に今があるんですね。

まだまだこれからですよ!

――他に得意分野は?

筋トレですね。日本リーグに1年目で初めて出たとき、シングルスで1ゲームも取れなくて全敗したんです。それが悔しくて、このままじゃダメだと。僕は球が遅いけど、自分の長所を生かそうということで、体力負けをしないようにトレーニングをめっちゃやって。次の年に4位になったんです。3日間で6試合戦って、足を攣る選手もいる中、僕は全然大丈夫だった。技術だけじゃないんだなって。

――課題があったら全力で取り組むタイプですね。

難点は周りがちょっと見えなくなっちゃうんです(笑)。

――周りが見えなくならないとYouTuberにはなれませんよ。

ハハハ。

――今後のビジョンは?

せっかくやっているので、全日本クラスの選手に出てもらって、一緒にやりたいというのが一つ。あとはソフトテニスとは違う企画で、ソフトテニスじゃないお客さんについてもらいたいというのが一つ。

――毎日動画を上げていると、自分の時間が全然ないですよね?

今これが楽しいんです。撮りながら編集のことを考えたりするのがとにかく楽しい。1日テニスコートにいることもあって、最近気づいたんですけど、僕、現役のころよりもうまくなってるかもって(笑)。プレッシャーから解放されて、みんなにちゃんとしたいいプレーを見せなきゃっていうのが入り混じって。バラエティなのに技術はしっかりというのを目指してます!

――ありがとうございました!

あゆタロウ27歳。自撮り中

あとがき

テンションが高くて変わった人が来たらどうしようと思っていたのですが(笑)、YouTubeの動画通り、ソフトなしゃべりの好青年だったあゆタロウさん。「コートをつくりたい」とかぶっ飛んだところもありつつ、中高生からのLINEに真摯に返信するマジメさも持ち合わせていて、中高生とガッツリつながっている、ソフトテニスメディアの未来を感じさせる人でもありました。もっとソフトテニスを盛り上げてくださいね! YouTubeだけで暮らしていけるのか、あゆタロウさんに聞くの忘れてました!


取材・文◎内田麻衣子(ソフトテニス・マガジン編集部) 写真◎榎本郁也

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