昨年の皇后杯を手にしたのは文大杉並高の林田リコ/宮下こころ。実に67年ぶり通算2度目の高校生王者が誕生したのだが、その初代高校生王者の一人、福田久恵(旧姓・生川)さんが全日本インドアを訪れ、2人を激励した。
「とにかく溌剌としていて、さわやかでした。これは高校の野口(英一)監督が素敵に指導されたんだなと感じました」と福田さんは第一印象を話す。
67年前は同じ四日市高に通う前衛の明井一子さん(旧姓・島田)と組んで、昭和25年のインターハイに優勝。招待出場した全日本選手権ではそれまで対戦したことのない人たちばかりだったが、頂点までかけ上がった。その後、短大に進学するとインカレ連覇、皇后賜杯も通算3回獲得。明井さんとは9年間ペアを組んだ。
「2人が別々の大学に進学すると聞いて、少し残念でした。せっかくでき上がりかけているのにね。でも、全日本に入っていると聞いたので、そこで頑張れと言いました。このままペアを続けたら、もっともっと強くなりそうなので」
67年前とテニス自体は大きく変化したが、当時素晴らしいコントロール力を持つ後衛の福田さんからすると、もう少しセンター狙いをしたり、足元を狙うフラットサービスも効果があると感じている。
「何度聞いても呼び方を覚えられないダブルフォワードなんか時代を感じますね。リコちゃんは1発目、3発目にアタックするので、そこは今のテニスかな、と」
これからも2人の活躍を見守るのが楽しみのひとつに。何しろ、72年の歴史で2組・4人だけが手にした縁でもある。そして、福田さんからひとつお願いがあると言う。
「今の試合を見ていて、相手がミスして“やった”と喜ぶ。それには違和感があります。自分たちがポイントを上げてなら許せるのですが、ああいうことはしてほしくないですね。それは2人にもお願いしました」
初対面時、どうしても渡したかったものがある。福田さんのテニス仲間が作っている小さなラケットのペンダント。短い時間だったが、その幸せな空間を2人が思い出してくれる“お守り“になる。
文◎福田達 写真◎牛島寿人