ピンチのときは動きが速くなっている。いつものリズムを意識しよう
ソフトテニスに効くメンタルトレーニング講座Vol.44 講師◎大儀見浩介
試合で絶体絶命のピンチ……。そんなとき、もう負けたとあきらめちゃダメですよ。できることはまだまだあります。ピンチをチャンスにする方法とは?
「次どうする?」でイメージの確認ができる
『ピンチ=不安』ではなく、『ピンチ=気持ちの切り換え、確認の第一歩、今すべきことを見つける時間』と考えましょう。これも普段のトレーニングで習慣化できます。試合中に追い込まれてしんどい時間帯は、走りのトレーニングで苦しい時間帯と同じです。苦しいトレーニングは、気持ちを切り換え、今すべきことを確認するメンタルトレーニングの時間でもあるのです。
私がサッカーのチームでメンタルトレーニングをするときは、練習中に選手がシュートを外したタイミングで「ハイ、いま何を考えていた?」「いまどんな感じだった?」と質問します。選手は「足がこうなってシュートを外してしまいました」と答える。「次はどうしたらいい?」と聞くと、選手は「こうしたらいいと思います」と答えます。
その瞬間、選手は頭の中でイメージの修正ができているんです。「よし、イメージで確認できてるでしょ、じゃあもう1回やってみよう」となるわけです。
ドツボ=イメージが速くなっている
ピンチでドツボにはまっていく選手がいますが、そういう人はイメージが『速くなっている』ケースが多いんです。スピードと筋力、つまり勢いだけで解決しようとして、力が入りすぎ、同じミスを繰り返してしまいます。その場合、頭の中でイメージを「ゆっくり」につくり直してみるのです。イメージと身体の動きがリンクしているかを確認しましょう。
年配の人がテニスをやったとき、追いつくと思ったボールに間に合わなかったということがありますが、これがイメージと筋力のギャップです。イメージでは追いつけても、筋力がついていかない状態です。
ここで注意すべきなのは、中高生の場合、頭の中のイメージが速くなっていても、筋力があるので追いつけてしまうことです。速く行こうとして、速く行き過ぎて、それでリズムを崩したり、ゆとりのない動きになったり、やらなくていい動きが入ったり、落ち着きがなくなったりします。
ピンチだったり、イライラしている人は、歩くのも速いし、行動も速いし、しゃべるのも速いし、テニスの動作も速いですよね。ピンチのときだからこそ、自分のいつものリズム、自分のいつものペースで動くのは大事です。
著者Profile 大儀見浩介●おおぎみ・こうすけ
東海大一中(現・東海大学付属翔洋高等学校中等部)サッカー部時代に全国優勝を経験。東海大一高ではサッカー部主将、東海大学進学後、高妻容一研究室にて応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)を学び、現在はスポーツだけでなく、教育、受験対策、ビジネス、社員研修など、さまざまな分野でメンタルトレーニングを指導している。2012年、メンタルトレーニングを広く伝えるために「株式会社メンタリスタ」を立ち上げる。著書に『クリスチアーノ・ロナウドはなぜ5歩下がるのか~サッカー世界一わかりやすいメンタルトレーニング』(フロムワン)、『勝つ人のメンタル~トップアスリートに学ぶ心を鍛える法』(日経プレミアシリーズ)。年間約250本の講演活動を行っている。