いよいよ来週に迫ってきた全日本高校選抜大会(3/28~30)。新チームで挑む最初のビッグタイトルに向けて、各チームとも調整に入っているころだろう。2月の前哨戦・アゼリアカップで上位進出したチームから注目校をピックアップしてきたこのシリーズ。今回は女子の和歌山信愛だ。
「今年は全然強くない」もアゼリアで5年ぶりV
インターハイ4度、選抜3度の優勝を誇る強豪校である和歌山信愛だが、「今年は全然強くない」と林三千夫監督は言う。
しかし、その監督の言葉をいい意味で裏切るように、2月のアゼリアカップでは、文大杉並、三重を次々と破って、5年ぶりに頂点へと駆け上がった。
文大杉並は昨年インターハイ、国体の団体2冠、三重は昨春の選抜を制しており、それぞれ今年はメンバーが変わっているとはいえ、「文大(杉並)さんや三重さんの方がずっと力がある」と林監督は分析していただけに、「想定外の結果」と目を丸くした。
チームの中心は、昨年も経験した新キャプテンの松井玲奈と浅倉衣里。ともに2年生、埼玉出身の後衛2人は、1月に行われた県の高校シングルス選手権ではともに決勝に進出するなど切磋琢磨する中で成長してきた。
新チームでは松井は1年生前衛の川﨑海奈と、また浅倉は同学年の前衛・岡田未来とペアを組む。
浅倉/岡田の勝負強さ
この2ペアに加え、アゼリアで全試合に出場したのが1年生後衛の多田千夏と2年生後衛の岩﨑彩のダブル後衛ペア。
準決勝の文大杉並戦では、ファイナルの接戦を制して決勝進出に貢献。決勝の三重戦では大将ペアに敗れたものの、4試合で3勝1敗と大いに手応えをつかんだ。
さらに、このアゼリアで勝負強さを発揮したのは準決勝、決勝で3番を任された浅倉/岡田。緊張感のあるラリーの中でも、冷静に配球し、緩急をつけて相手ペアを翻弄したのが印象的だ。
林監督が大将ペアとして信頼を寄せる松井/川﨑が1番または2番でポイントを託される可能性を考えれば、おそらく最後に勝負を任されるのは、この浅倉/岡田になるのだろう。
「選抜も、前の2本のダブルスで負けることなく、浅倉/岡田に回せれば」と、林監督もこのオーダーに手応えを得ている。
新チームについて「昨年、一昨年のチームに比べると弱いと思っていますし、それを選手たちにいつも言っています」と林監督は言う。
しかし、選手たちには、そうした評価を真摯に受け止め、自分たちができる力を最大限に発揮しようとする強さがある。だからこそ、アゼリアでは3ペアともが安定して力を発揮できた。
過去2年の選抜の結果は、一昨年が準優勝、昨年がベスト8。「この結果を自信にして、選抜に向かっていける」(林監督)と確かな手応えを得た和歌山信愛が、先輩たちを超えて大きな目標へとたどりつけるか――。大一番が迫ってきた。
文◎田辺由紀子 写真◎山田次郎