【NTT西日本・原/岩﨑が引退】6連覇を逃した年がターニングポイント「絶対勝とう」でリベンジ
NTT西日本・原侑輝/岩﨑圭、引退インタビュー
NTT西日本の岩﨑圭と原侑輝が17年度を最後に引退した。17年シーズンは、初ペアながらも天皇杯で8強入りを果たし、有終の美を飾っている。堀晃大監督が「よくやった。30歳過ぎても頑張れるということを証明してくれたんじゃないか」と評した2人に、競技生活を振り返ってもらった。
岩﨑 圭
1984年2月10日生まれ。東京都出身。右利き/前衛。桜田中→巣鴨商業高→中央大→NTT西日本
原 侑輝
1984年4月16日生まれ。和歌山県出身。右利き/前衛。和歌山LCC→楠見中→岡山理大附高→関西外語大→NTT西日本
若手に負けないように、コテンパンにできるように
ーー長い競技生活でしたが、印象深いシーズンを教えてください。
岩﨑 中一から始めて、24年間の競技生活でした。広島に来てからは12年ですが、個人的には最後の1年間が印象深いです。ケガで苦しんだのですが、最終的には、久々に勝てました。
原 僕は小4で始めて、NTT西日本に入社してからはあまり成績が出なかったのですが、17年シーズンはランキングで10位以内に入れたので、結果的に一番良いシーズンでしたね。
岩﨑さんとのペアは初めてだったので最初は手応えなどなかったですが、「こうやろう」「ああやろう」ということをよく話せたのが良かったのかなと感じています。
岩﨑 原と組むにあたり、僕は今まで通りの戦術だったのですが、原がモデルチェンジして後衛をやってくれました。日頃から若手と練習試合ができたのも大きかったですね。戦術的にも技術的にも伸びた1年でした。
もっと僕らが若手に勝つようになれば、チームとしてももっと伸びると思っていたので、簡単に負けないように、こっちがコテンパンにできるようにと。チームにおける役割として、2人で確認していました。
ーーお二人は堀監督、舘越コーチと同年代ですね。ベテランとして、監督・コーチと一緒にどうやってチームを築き上げたのでしょうか?
岩﨑 堀さんと僕が同年代で同級生、原は一つ下で、舘越コーチは入社は2つ下ですが同級生なんです。僕はあまり気を使わずにやってきましたが、堀監督と舘越コーチはけっこう気を使っていたのかなと。
一昨年から若手(船水雄太、林大喜、丸中大明)が入ってきて、監督、コーチが言えなかったことなどをカバーして僕らがパイプ役になれたらと思っていたのですが。いい意味で、パイプ役は不要でした。
みんなそれぞれよく考えているし、監督とコーチに対して不満もない。堀監督がああいう気さくな雰囲気ということもありますが(笑)、チームとして、とても良い雰囲気で1年間まわっていたのだなという印象です。
原 僕もチームのためにこれをしようと、とりたてて意識はしていなかったですが、意図もなく自然とみんなと話をしていたことが、チームを引っ張ることにつながっていたのかなとは思います。
原が入ってくれてシングルスで勝てるように
原 そういえば、入社1年目も印象深いですね。僕は戦績は良くないのですが、小学校の時にソフトテニス・マガジンに載っていた選手とNTTで初めて一緒にやることになって。部についていくのでいっぱいいっぱいでした。すごい先輩のいるなかで必死だったので、逆に印象に残っていますね。
岩﨑 でも、原は1年目の日本リーグのシングルスで全勝してくれたんですよ。原が入ってくる前の年、シングルスで全然勝てなくて。チームとしてけっこうシングルスで苦戦していたのですが、原が入ってくれて楽になった。そこから、NTTのシングルスが強くなりました。
原 僕らは、日本リーグでは1回しか負けを経験していないですよね。
岩﨑 僕が12年で11回優勝、原が11年で10回優勝です。その一回の負けが、6連覇がかかっていた2009年でした。正直、あの時はなんというか、「勝てるかな」って、フワっと試合に入っていたんです。負けないだろうみたいな油断もあって。
原 うんうん、そうでした。
岩﨑 日本リーグが天皇杯の翌週だったこともあって、準備もちゃんとできていなかった。でも、いけるだろうみたいな感じで試合に入ったら、3位。
そこからもう、お互いに頼るのやめようとみんなで話をしました。みんなどこかで、「あいつが勝つだろう、こっちが勝つだろう。中堀(成生)/高川(経生)が勝つだろう」みたいなところがあったんですよね。
ーーそういう悔しい経験は、若手は知らない。だから伝えてきたのですね。
岩﨑 一度逃した経験があるので、6連覇がかかっていた2015年の日本リーグ前は、当時を知る僕と原、そして水澤(悠太)の3人で、絶対勝とうと話をしていましたね。
後輩たちにも、僕たちでしつこく言っていました。やっぱり、なかなか負けていないチームだったのでピンとこない部分もあったと思います。だからこそ、しっかり伝えたつもりです。
岩﨑&原 2015年は、日本リーグの会場が広島から名古屋に移動した年でもありました。いろんなことが重なっていて、印象に残っていますね。
日本だけでなく、世界のNTT。子供たちにあこがれられるチームに
ーーこれからはOBとして、どんなチームになってほしいと思っていますか?
原 17年は、国内では全日本シングルス以外はNTTが優勝できました。18年はアジア競技大会もあります。日本国内だけでなくて世界で活躍できる選手たちなので、一人でも多く日本代表に入ってもらって、金メダルを持って帰ってほしいですね。日本だけでなく、世界のNTT。それを目標にしてやってきているので。
岩﨑 勝つのももちろんですけど、目標を伝えていける、子供たちにあこがれられるチームになってほしいですね。僕らは、勝てなかった昔を知っている。
今の状況しか知らない選手も入ってきていますが、周りの人に感謝の気持ちを伝えられる選手、人間になってほしい。そうすれば、もっと愛されるいいチームになる。まあ、みんな分かっていることなのですが。
僕らは、仕事後の18時から21時の練習だった時代もありました。チームは2017年にシンボル化しましたけど、今の環境は当たり前ではない。先輩も会社も、いろいろな人のサポートのおかげでやれているいうことを、みんなには忘れないでいてほしいですね。
ーー原選手はコーチとなります。
原 4月からは村田匠(日本体育大卒)と広岡宙(上宮高卒)の2人が入りました。社会人として1年目の2人には、テニスの面はもちろん、社会人としての基本もしっかり教育できたらと思っています。
大学生だったら、ある程度の上下関係は経験してきたと思うのですが、特に、広岡は高卒なので。高卒だから分かっていないという意味ではなく、そういうところでもしっかりフォローしていけたらと考えています。
4月よりマネジャーとなる、舘越清将コーチのコメント
堀監督と同時にコーチに就任して2年間、最高の仲間たちでした。選手一人ひとりが自立していますし技術も高いので、試合の不安をできるだけ減らせるようにサポートしてきました。
チームには、これまで堀監督や原/岩﨑と築き上げたものがありますし、歴代の中堀/高川、もっと言えば昔の先輩から引き継いだ伝統があります。マネージャーの立場になっても、この伝統をつなげていきたいですね。これからは大阪で過ごすことになりますが、離れても一緒の気持ちで戦っていきます。
取材◎井口さくら トップ写真◎佐々木萌 プレー写真◎江見洋子、BBM