【選抜こぼれ話】「勝負の世界は甘くない」涙の理由と握りしめたお守り
ソフトテニス・マガジン6月号は4/27発売
男子は東北、女子は三重の優勝で幕を閉じた高校選抜(3月28~30日)。連覇を遂げた三重の、決勝でのこぼれ話をお届け。
決勝でオーダーから外れる
女子の春日本一を懸けた和歌山信愛(和歌山)との決勝の直前。連覇を狙う三重(三重)の待機場所で、村田真紀乃監督が2人の選手に話しかけていた。準決勝まで3番配置で戦ってきた田川美怜/浪岡菜々美。監督の話を聞きながら、浪岡は涙を流していた。
数分後、決勝のオーダーが明らかになった。今大会それまで一度もプレーしていなかった勝田珠莉/石田恵美莉が出場する代わりに、2人はオーダーから外れたのだ。晴れの舞台でプレーできない悔しさ、自分への不甲斐なさ。涙の理由は、いろいろあっただろう。
試合は、勝田/石田が期待に応えて最初の勝利をつかみ、三重は見事に連覇を達成した。試合後に村田監督が語ったオーダー変更の理由は、4月27日発売のソフトテニス・マガジン6月号をご覧いただくとして、もう一つ気になったのは、田川/浪岡にどんな言葉を掛けていたのか。返ってきたのは、厳しい内容だった。
「喝を入れただけで、慰めてはいません。本人たちは悔しい思いをしているかもしれませんが、勝負の世界は甘くないですから」
「パワーを送らなきゃ」
では田川と浪岡は、どんな思いで決勝を見つめていたのか。ソフトテニス・マガジン6月号で紹介している2人の言葉以外に印象に残ったのが、試合前に泣いていた浪岡が、試合後に明かした仲間への思いだった。
「(同じ新2年生の)勝田が、自分のお守りを『頼む』と言って渡してくれたんです。私はもう一つのコートのスコアを書いていたんですけど、パワーを送らなきゃ、と思って、『勝田、頑張れ!』と思いながら、ずっと握っていました」
優勝が決まった瞬間、背後のスタンドから選手・保護者による応援団の歓声が降り注ぐベンチ前で、村田監督とメンバー全員の喜びの輪が広がった。駆け寄る浪岡の右手にはペンとスコアシート、左手にはお守りが、しっかりと握られていた。
文◎石倉利英 写真◎宮原和也
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