発足3年のカンボジアチームが最高峰のアジア大会に参戦、荻原コーチが感じた手応え
荻原雅斗のカンボジア通信【不定期連載⑤】
東北高と中京大時代に三度の日本一を経験した荻原雅斗さんは、大学卒業後に単身カンボジアへ。現在はカンボジアのソフトテニスナショナルチームでヘッドコーチを務めている。
発足3年のカンボジアチームはソフトテニスの最高峰と言われるアジア競技大会に出場。予選リーグでは日本と同組になり、敗れはしたが、東北高合宿の成果も見せて予選リーグ3位で大会を終えた。国際大会の大舞台で、荻原さんはどんな手応えを得たのか。
荻原雅斗/おぎわら・まさと
1990年7月1日生まれ。岐阜県多治見市出身。Global Grow Cambodia 代表取締役社長。青年実業家。 東北高→中京大→カンボジア。ソフトテニスを12年間続け、学生時代に三度の日本一を獲得。現在はカンボジアソフトテニスナショナルチームのヘッドコーチとして活動中。また、教育(スポーツ・音楽・文化交流)という軸でさまざまなプロジェクトの構築を行っている
中津川先生からは「よくやった」と
ーーカンボジアチームがアジア大会に出場しました。国別対抗の予選リーグでは日本と対戦しましたね。
カンボジアチームが国際大会で日本と対戦したのは初めてです。2016年に千葉で開催されたアジア選手権でも叶わなかったので、夢として、そして目標としてやってきました。
対戦直前、選手に「日本に勝ったら面白いね」と声をかけたら、「勝つぞ!」と意気込んでいて。いつもメンタル面が弱いので、楽しんでやって少しでも爪痕を残せればと思っていました。
ーー0ー③で敗れましたが、試合内容は?
もちろん、まだまだ話にならない感じではあるのですが、ゲームポイントを取ったりデュースで競る場面もありました。最後を取りきれないのが弱さでもありますが、発足3年でここまで来られたことは感慨深かったです。ボロボロのコートでスタートした頃は、レシーブを返せなくて終わりという状況でしたから。
それと後から聞いた話ですが、予選リーグでは、東北高の中津川先生がカンボジアチームの試合を頻繁に見にきてくれていたみたいで。今年の6月から2か月間東北高で合宿をさせてもらって、中津川先生は「もっと教えたいことがあった」と言っていたのですが、大会後には「よくやった」と声をかけてくださって。本当にうれしかったです。
今日の日本との試合は、ぼくが海外普及を始めたころからの夢が叶った瞬間で、試合中はこれまでの辛かったこと、楽しかったことが走馬灯のように駆け巡り、こみあげる感情を抑えるのに必死でした。
試合後には恩師中津川先生に「よくやった、がんばった」と声をかけていただき、涙腺崩壊しそうだった。
— 荻原雅斗🇰🇭カンボジアのまさと (@masato_ogiwara) August 31, 2018
選手たちも、中津川先生を見かけると自らあいさつに行っていて。カンボジア人は上下関係が厳しくなくラフな感じなのですが、東北高の水木瑠キャプテンをはじめとする生徒たちの言動や姿勢を見て、肌で感じるものがあったのだと思います。アドバイスを真剣に聞いている姿に、成長を感じましたね。技術面以外でも日本合宿の成果を感じることができた瞬間です。
増田が日本をけん引している姿に、もっと頑張らなければ!
ーーカンボジアチームの今後の強化ポイントは?
前衛のポジションとか、ポイントをとるためのセオリーですね。東北高で指導してもらいたかったのですが、2か月では短すぎました。カンボジアチームのレベルはソフトテニスの基礎を叩き込むという段階でしたから。東北高での合宿を経て、やっと前衛のポジションなどのベースができてきて、次のステップに上がれるかなという感じです。
メンタル面は、ずいぶん成長したと思います。これまでは「格上の相手には仕方ない」という感じですぐにあきらめてしまっていましたが、アジア競技大会では最後まであきらめなかった。10回以上の国際大会に出場してきましたが、初めてのことです。日本で頑張ってきた自負もあったのだと思います。
ーー東南アジアではインドネシアがアジア大会4強に躍進しました。
インドネシアは東南アジアで頭一つ抜けた存在です。その次に、タイ、フィリピン、カンボジアが並んでいて。しかし、今回は予選リーグでインドネシアと対戦してあと一歩のところまで迫ることができ、手応えもありました。2019年2月の東南アジア大会では、勝ちたいですね。
ーー荻原さんにとってアジア大会はどんな大会でしたか。
日本選手団が刺激になりました。長江光一さんは、僕が日本でプレーしていたころからあこがれの存在ですし、同級生で小学生の頃から切磋琢磨していた増田(健人)が日本をけん引している姿に、自分ももっと頑張らなければと思いましたね。
それから、日本の応援団に声をかけていただいたことも励みになりました。選手のご両親から「『よるてに』観てるよ」とか「Twitterチェックしてます!」とか言ってもらえて。WEBの活動では僕たちの親世代の方に情報を届けることも目標にしているので、思わぬところで反響を得られたのはよかったですね。
★荻原さんのカンボジアでの日々をつづったブログはこちら
取材◎井口さくら 写真◎小山真司