荻原さんがYouTuberに!? 僕が動画を撮る理由「ソフトテニスの選手の価値を高めたい」
荻原雅斗のカンボジア通信【不定期連載⑨】
カンボジアナショナルチームの荻原コーチがYouTuberに転身!? まさとMASATOチャンネルで九島一馬、船水雄太、広岡宙らとのコラボ指導動画を配信しているYouTuberまさと。
その狙いはYouTuberとして有名になること…ではなく、選手の価値を高めることにあるという。ソフトテニスYouTuberのあゆタロウとの関係も聞いた。
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荻原雅斗/おぎわら・まさと
1990年7月1日生まれ。岐阜県多治見市出身。Global Grow Cambodia 代表取締役社長。青年実業家。 東北高→中京大→カンボジア。ソフトテニスを12年間続け、学生時代に三度の日本一を獲得。現在はカンボジアソフトテニスナショナルチームのヘッドコーチとして活動中。また、教育(スポーツ・音楽・文化交流)という軸でさまざまなプロジェクトの構築を行っている
テニスコートでは見られない選手の『素』を入れる
――ソフトテニスYouTuber群雄割拠の時代ですが、YouTubeでソフトテニスの指導動画を始めたきっかけは?
僕、もともとTwitterから発信を始めて、ブログをやっていたんですが、ソフトテニスに対するいろんな思いを綴ると、中高生だったり指導者の方からDMが届くようになったんです。「こういうときはどうしたらいいですか」「打ち方を教えてください」と。その時、ブログじゃ限界あるな、動画であればもっと伝えやすいんじゃないかと思ったのがきっかけです。昨年の12月からソフトテニスの指導動画を上げ始めるようになりました。
――荻原さんはこれまでYouTubeで国際大会の試合動画だったり、よるてに(荻原さん、ソフテニ姉さん、しのとさんによるトークチャンネル)を展開していて、その延長線上に指導動画があったんですか?
それぞれ主旨は違っていて、もともとは国際大会の試合動画を上げようとチャンネル登録したんです。そこでいろんなコメントを見ると、ソフトテニスの海外事情だったり、国際普及について知らない人が多いなと感じて。それぞれ得意分野がある3人で『よるてに』を始めました。
どこに需要があるかを探し続ける中で、今の段階で行きついたのが指導動画。今は分かりやすくYouTuberまさとを名乗ってるんですけど、YouTuberになりたいわけじゃないんです(笑)。
ソフトテニスで強くなりたいけど指導者がいない中高生たちや、そういう子を抱えるソフトテニス未経験の指導者の力になりたい。そういう方たちでも分かるように、という指導動画を作っている段階です。
――指導動画の先駆者としてあゆタロウさんがいますね。コラボもしています。
彼が『ソフトテニスYouTube』という新しい需要を作ったと思います。あゆタロウくんは『ソフトテニス×エンタテインメント』で、僕が同じことをやっても二番煎じにしかならない。
先行者優位なところがあるので、そうじゃない場所で戦っていこうと思った時に、僕はソフトテニス関係者に知り合いが多く、選手と一緒に盛り上げていこうと。選手の露出も増やしていけたら、という思いもあって、今のスタイルになりました。
――どんな動画が一番見られていますか?
ぶっちゃけ選手を出せば反応はいいんです(笑)。彼らはプレーはもちろんすごいので、内容は間違いないですから。僕が気を付けているのは、テニスコートでは見られないような選手の『素』を入れること。あえてちょっとゆるい感じというか。素顔が垣間見えるオープニングだったり、エンディングに重点を置いています。「実はこんな人間なんだ」というのが伝わるように。それが見える動画は再生されていますね。今後は、そういうところにもっとコミットしながらやっていけたらいいなと思っています。
――現時点でYouTubeの収益はつけていないとTwitterで書かれていました。
僕の書き方に誤解があったかもしれないですが、「つけていない」というより、収益が無効化されている状態です。過去の国際大会の動画なども全部消して、もう一度、審査をしてもらっている段階ですね。丸2か月とちょっと収益はゼロ。そんな状況で、先行投資として動画を作り続けています。
――経費は全部自分で持ち出しですか!! 今は種をまいている段階?
そもそもYouTubeの広告収益はあくまでプラスアルファくらいに思ってます。僕の狙いは、その先にある選手のプロ化だったり、選手の価値を高めることなので。
あゆタロウくんがライバルですかとも言われるんですが、「そもそもベクトルも違えば狙いも違うし、お互いそういう風に思ってないよね」と、あゆタロウくんとも話をしました。
――選手の魅力を引き出していく、プロデューサー的なYouTuber?
プロデューサー、そうですね。もっと僕のチャンネル登録が増えれば、一つのプラットフォームとして、いろんな展開ができていけるんじゃないかなと思ってます。
選手も、自分の良さは自分でプロデュースする時代に
――YouTubeの動画はどう作っているんですか?
カメラ2台とパソコン1台で、編集は95%僕がやっています。インターンで来た大学生や友人に手伝ってもらうこともありますが。今後は編集部隊も増やしていきたいですね。そういう意味で収益があれば、もっと報酬も増やしていけるかな、というのがあるんですけど。
――1本撮影するのにかかる時間は?
僕だけが出てる動画は1本1時間。選手に出てもらう時は、前もってカットも全部決めておいて、1時間で3~4本撮ります。彼らも練習後で疲れているので、できるだけ短い時間で。
――選手と動画を撮る時のコツは?
最初は誰でもカメラに向かってしゃべるのは緊張するもの。これはもう『慣れ』です。1回目より2回目の方がスムーズに話せたりして、視聴者の方も見ているんですよ。そこは僕の狙いでもあって、徐々に慣れていく様子を見てもらうと、視聴者も「しゃべりがうまくなった」「分かりやすくなった」と感じてくれます。
――船水雄太選手とのコラボ動画が見られていますね。
彼はめちゃくちゃ愛される選手。人前で話すのはうまいのですが、天然なところがあってそこが魅力です(笑)。マジメで天然、みんなが彼を応援してあげたくなる人柄。再生回数を見ても人気は一目瞭然です。
――船水選手も、九島一馬選手も、もっと発信していきたいという思いがあると聞きました。
まだ一部…という気がします。SNSに関しては、選手にSNS講座みたいなのをやるべきだと思いますね。見られている立場ということを踏まえて、自分の良さは自分でプロデュースする、できないなら誰かに頼む。それをやっていかないと、ただソフトテニスが強かった人で終わってしまいます。ソフトテニス界でも、一スポーツ選手としても、世界に打って出るならSNSをもっと活用すべきだと僕は思うんですよね。
国際大会で代表選手と話す機会も多いのですが、彼、彼女たちは人としても魅力がある。でも、ファンの人はプレーしているところしか知らなかったり、そもそも知るきっかけが今のソフトテニス界は少ないんです。選手の魅力をもっと多くの人に知ってほしい、それを伝えるのが僕の役割だと思ってます。
――今後もYouTubeで選手の持ち味を引き出す動画を作っていきますか?
いろんな実業団に声をかけさせてもらっていて、いろんなチームや選手にフォーカスしてやっていけたらなと思っています。
僕はカンボジアの活動も丸4年、これまで無給のボランティアでやってきて、そのスタンスはこれからも変わりません。それはソフトテニスが好きだから。カンボジアでは自分で事業を回しているのでお金を稼ぐことが悪いとは思わないけど、ソフトテニスに関してはお金が稼げなくてもいい。競技のために、ソフトテニスに人生を賭ける選手のために、自分の時間や経験を思いっきり還元してソフトテニスの未来を明るくしたいと思っています。
写真◎荻原雅斗 取材◎内田麻衣子