カンボジアでは2014年にソフトテニス連盟が発足し、まさとMASATOチャンネルでソフトテニスの指導動画を配信している荻原雅斗さんは、2015年4月にナショナルチームコーチに就任した。今年2度目の世界選手権に挑むカンボジア代表は、8月末のアジア大学で日本と3番勝負を演じるなど、過去最高の仕上がりだという。確立されつつある”カンボジアスタイル”で、4強入りを狙っている。
荻原雅斗/おぎわら・まさと
1990年7月1日生まれ。岐阜県多治見市出身。Global Grow Cambodia 代表取締役社長。青年実業家。 東北高→中京大→カンボジア。ソフトテニスを12年間続け、学生時代に三度の日本一を獲得。現在はカンボジアソフトテニスナショナルチームのヘッドコーチとして活動中。また、教育(スポーツ・音楽・文化交流)という軸でさまざまなプロジェクトの構築を行っている。YouTuberまさととしてソフトテニスの指導動画も配信中
アジア大学の国別対抗では日本と3番勝負に
ーー世界選手権まで1か月を切りました。カンボジアチームは2度目の出場です。
前回は発足したばかりのナショナルチームで右も左も分からないまま参加し、初めての国際大会で何もできずに終わったので、選手も僕も、悔しいという気持ちすらありませんでした。そもそも当時の選手は”前衛”が理解できず、試合になりませんでしたから。国際大会の日本のプレーを見て、初めてボレーを知ったんです。
ーー今年のチームはどうですか。
過去最高の状況で、とてもいい雰囲気で来ています。8月末にフィリピンで第1回アジアジュニアとアジア大学が開催されましたが、カンボジアはナショナルメンバーが参加しました。アジア大学では国別対抗戦で日本と3番勝負にもつれ、シングルスではベスト4! ダブルスでも日本や韓国勢を破って8強に入るなど、かなり手応えがありました。
これまで、日本・韓国・中華台北が出場する大会ではメダルのチャンスは全くありませんでしたから、今回初めて日本代表に勝てたことは大きな一歩です。日本や韓国勢はアンダー世代の選手が出場していたこともありますが、発足時の5年前には想像もできない流れがきています。
ーー以前、メンタルが課題という話がありました。
まだまだ経験不足で、これまでは競ることがなかったんです。試合になると力を発揮できず、簡単にあきらめることも多かった。でも今回は、すこっと負けることがなかった。確立されつつある僕らの戦術がはまって勝ちきれた試合もあって、選手は自信になったはずです。
何をしてくるか分からない”カンボジアスタイル”
ーー確立されつつある戦術について。何かきっかけはあったのですか?
実は、6月のチャイナカップ視察の際に確信を得た戦術があって。カンボジアの戦い方は中華台北に似ていて、スライスでしのいだり前後に揺さぶったりするのですが、そのスタイルに日本がやられているシーンが多かった。テニスっぽいということでもあるのですが、何をしてくるか分からない脅威が対応を遅らせていると感じたんです。
そこで気づいたのが、彼らに日本のやり方を押し付けていたということでした。これまでずっと、日本ではどうか、日本のやり方を教えてくれと言われてきたので、僕も何の疑いもなく日本のベースを伝えてきましたが、彼らと日本人は根本が違う。必ずしも日本がスタンダードである必要はないと思ったんです。実際に、日本流を押し付けずに一歩外から見るようにすると、僕が想像もしない動きや考えを持っていて。それでいいと気がついたんです。
ーー具体的に、どういう戦術なのでしょう?
例えば、自分の後衛のロビングが短くなったら、前衛はとりあえず下がってフォローに備えますよね。でも、カンボジア選手は下がらないでローボレーをしてみたり、返球が甘ければ逆に攻めたりする。彼らの感性に任せてみると、ペアもフィーリングで噛み合って、うまくいくんです。スキあらば攻めるスタイルですね。
ーー世界選手権の目標を教えてください。
2018年のアジア競技大会は予選リーグ敗退でしたが、インドネシアに勝てればリーグを突破していました。インドネシアは、日本から見たら訳の分からない戦術かもしれないですが、彼らはインドネシア流を完成させていた。そこがカンボジアとの差でした。今回はカンボジア流で挑んで、No.4の座を狙いたい。トーナメント次第の局面もありますが、狙える位置に来ている手応えを感じています。
荻原雅斗のカンボジアあるある
⑤お店の入れ替わりが激しい!
YouTube撮影で一時帰国してからカンボジアに戻ると、その間に新しいお店ができていて景色が全然違うという。しかし、1か月後には潰れていることも少なくない。
写真提供◎荻原雅斗 取材◎井口さくら