2022年インターハイまでもうすぐ。そのインターハイで優勝回数歴代1位を誇る、奈良の高田商業について、振り返ってきた。ここでは、2022年7月号のソフトテニス・マガジンにもご登場いただいた、高田商業の前々監督の西森卓也先生の指導者像に迫っている。
豊田雅孝(全日本U-17コーチ、東邦ガス前監督)
毎年、あの時のことを思い出す
今回は現役高校監督ではないが、西森監督初期の教え子、豊田雅孝さんからメッセージが届いた。西森監督がベンチ入りして2年ほどが経過していた時のことだ。現在、高田商業はインターハイ団体戦に33年連続出場中だが、それを見るたびにあの時のことを思い出すという。
当時2年生の豊田さんは県予選決勝の対天理高戦の三番勝負を任されることに。しかし、この戦いに敗れて、インターハイの団体戦出場が消える。その翌年から現在まで連続出場を決めているだけに、インターハイに向かう後輩たちのニュースを聞くと自分たちのことを思い出してしまうのだ。
「渡海先生の話で全国優勝しない方がよく覚えているというのがありましたが、まさにその1年でした。西森先生にも重圧があったかもしれませんが、その足を引っ張ったというのは自分の中では消えません。私は西森先生のクラスだったのですが、翌週のホームルームで、先生は‟この世から消えたいわ”と言われました。それほど大きな出来事だったのです」
ただ、このインターハイ予選はこれで終わりではなかった。翌日の個人戦で、前日敗れた相手と対戦して16-0(G④-0)のパーフェクト勝利を飾っている。そして、インターハイ個人戦では大将だった傳村貴夫/長手裕介が優勝する。
「西森先生は部員一人ひとりに対応して下さる方でした。曲がったことが大嫌いで、そういう思い出はたくさんあります。今振り返ると、人間性を高めていただいた3年間だったと思います。今回、渡海、牧、紙森各先生のお話を読んでいても、自分たちが教わったような一貫した指導をして来られたと感じますね。でも、何年連続という記事を見たら、あの時のことを思い出してしまうのです。先生に“消えたいわ”と言わせた自分たちのことを」
大きなファミリーを感じさせる高田商業。男女問わず、多くの卒業生たちが指導者として未来の選手たちを育てている。特に印象的なのは、勝利へのこだわりや練習との向き合い方などの原点での経験が、その後の指導哲学を構築していることだろう。