日没が早くなり、練習時間が短くなってくるころ。試合が落ち着いた人も多いはずだが、オフシーズンに入るこの時期こそ、心に目を向けてみてほしい。本誌や熱中!ソフトテニス部でもお馴染みの専修大学の佐藤雅幸先生によると、練習時間が短くなる秋以降は、心にフォーカスするのにとてもいい時期だそう。本連載では、佐藤先生に日頃の練習や試合で気になるちょっとした疑問への考え方を解説いただく。考え方の幅が広がれば、自ずと心も鍛えられるはずだ!
連載第一回は、日頃の生活と試合のつながりについて。靴を揃えたりゴミを拾ったりと、日頃の私生活を意識している人は多いはず。そういう積み重ねは、心にどのような働きかけをもたらすのか?
意味付けすれば、エネルギーになる
佐藤雅幸(専修大学教授)
何かをやる時には、スイッチがあります。トリガー(引き金)とも言いますが、一つひとつの行動に自分で意味付け(条件付け)することが大切です。ただ靴を揃えるのではなく、「この靴を揃えることによって、試合の最後の最後で、自分のパワーになるんだ」と思ってやる。ゴミ拾いも「このゴミはポイントなんだ」と意味付けをする。もちろん、意味付けし過ぎてもダメな時はありますが、ほとんどの人は意味付けが足りていません。
有名なイソップ寓話「3人のレンガ積みの職人の話」は、意味付けの役割を理解するために良い例です。「あなたは何でレンガを積んでいるのですか?」と聞くと、一人目の職人は「ボスの命令で渋々レンガを積んでいる」と言う。二人目は「お金のためにレンガを積んで壁を作っている」、三人目は「レンガを積んで世のためになる“大聖堂”を作っている」と答える。同じレンガを積んでいても意味が違うので、やっている人たちのモチベーションが違います。伸びる選手というのは、このように何事にも意味を持って取り組んでいる。ゴミでも自分のエネルギーにしています。