史上初のハードコート開催となった第78回天皇賜杯・皇后賜杯全日本選手権大会。その第3日目が11月19日、東京都の有明テニスの森公園で行われた。男女ともに準々決勝4試合が行われた後、準決勝と決勝は初の有料試合として有明コロシアムが舞台となり、ハイレベルな熱戦が繰り広げられた。
女子は、準決勝の第1試合で、梶尾明日香/古田麻友(ワタキューセイモア)と、高校生で4強入りを果たした前田梨緒/中谷さくら(須磨学園)が対戦した。第6ゲームまでは互いに譲らなかった中、中谷のボレーなどで一歩抜け出した前田/中谷は、第8ゲームでも前田のパッシングや中谷のハイボレーなどで先行。梶尾/古田も4度のマッチポイントをしのぐなど粘ったが、高校生ペアに軍配が上がった。
第3シードの志牟田智美/根岸楓英奈(東芝姫路)と、前回8強の小林愛美/𠮷田澪奈(ヨネックス)が対戦した第2試合では、志牟田の安定したストロークから根岸のボレーやスマッシュが冴えた志牟田/根岸が第2ゲームから3ゲームを連取。小林/吉田も随所で好プレーを見せたが、取られた後のゲームできっちり立て直した志牟田/根岸がG⑤-3で決勝進出を決めた。
前田/中谷対志牟田/根岸との決勝戦。ともに兵庫県のチームということで、これまで何度も対戦を重ねてきた両ペア。志牟田は「自分はいつも通りに粘り強いテニスをしつつ、攻めるところではしっかり攻めるという、メリハリのあるプレーを心掛けました」と話し、2ゲームを先取されても決して慌てなかった。第3ゲームから根岸のストップボレーや志牟田のパッシングなどで反撃を開始し、流れを引き戻す。
G3-3で迎えた第7ゲームを根岸の2本のボレーなどで奪うと、第8ゲームは前田/中谷が粘ってデュースへ。実は根岸は体調が思わしくなかったが、「たとえ抜かれても決められても強気で行こうと決めていた」と、攻める気持ちを最後まで貫いた。最後は前田のロビングがベースラインを割り、優勝が決まった瞬間、根岸はあふれ出る涙を止めることができなかった。
志牟田は「めちゃめちゃ疲れましたが、最高の気分です」と笑顔を見せた。神戸松蔭女子学院大学時代の2016年、地中葵とのペアで全日本選手権を制している志牟田にとっては、7年ぶりの戴冠となった。
「16年の優勝の後は、18年も決勝まで行きましたが、G4―2から負けて悔しい思いをしました。3回目の決勝だったので、気持ち的にはだいぶ落ち着いてできました。根岸に助けてもらってできた優勝だったと思います」
今季は日本代表としてアジア大会で活躍し、充実したシーズンを送ってきた志牟田と、全日本U-20として将来が有望視される根岸。上位シード勢が志半ばで相次いで敗退していく中、個々の持ち味を発揮しながら着実に勝ち上がり、ついに日本一の称号を手にした。
また、6年ぶりの高校生チャンピオンにはわずかに及ばなかったものの、終始、笑顔で楽しそうにプレーし、大学生や社会人を次々と破って準優勝に輝いた前田/中谷の健闘も大いに称えたい。