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2024.04.04

【不定期連載・データと心理①】2023年度全日本女王の志牟田/根岸、決勝の舞台での初選択!

本誌連載『データ分析をあなたの味方に!』出張インタビュー/全日本選手権女子・前編

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決勝の大舞台で、初めて、サービスダッシュをやめる選択をした根岸(志牟田/)

ソフトテニス・マガジンでは、元実業団選手のアナリスト・成田悠さんによるデータ分析法を連載中。3、4月号では2023年度全日本選手権の女子決勝、志牟田智美/根岸楓英奈(東芝姫路)と前田梨緒/中谷さくら(須磨学園)の試合を分析した。今回は、皇后杯覇者の志牟田/根岸に、全日本選手権決勝を振り返ってもらい、成田さんの分析時の3つの疑問に答えていただいた。まずは、前編をお届け。

アナリスト◎成田悠(日本女性アスリート協会)
Profile なりた・はるか◎1990年11月6日生まれ、33歳。小学生でソフトテニスを始め、明治大法学部卒業後、アキムとアドマテックスで5年プレー。皇后杯では巻高3年時に8強、アドマテックス1年目の2016年に4強(ともに/小林優美)。2016年全日本実業団3位。現役時代は後衛。2017年に引退後、スポーツのデータを取り扱う会社にて野球のデータ配信事業やソフトテニスの分析事業に携わる。2022年10月より、一般社団法人日本女性アスリート協会の事務局長とデータアナリストに就任。明治大女子のコーチも務める傍ら、“いつもテニスを持ち歩く♪“がコンセプトのWEBメディア、ソフポケの運営など、幅広くソフトテニスに携わる。ソフトテニス・マガジンにて『データ分析をあなたの味方に!』を連載中

ーーー随分と時間が経っていますが、全日本選手権優勝おめでとうございます。アナリスト・成田さんの分析時の疑問について、質問させていただきます。まずは、サービスのデータから。根岸選手は、2、3回目のサービスゲームである3、5G目のサービスの確率と取得率が上がっていました。そして、クロス・逆クロスともにしていたサービスダッシュを5G目からクロスだけやめていますが、それはなぜですか?

根岸 3G目のクロスサービス時に中谷選手にクロスのショートを打たれて、その1本が強烈で。これまでに何度も試合をやっている相手でもあり、サービスダッシュ時に足元やクロスのショートでやられていた印象はあったのですが、1G目もカットが返しにくくて、浮いてきたボールでポイントできていなかったので、サービスダッシュをして失点するなら、後ろで一本待って出る方を選びました。

ーーー途中でサービスダッシュをやめるという選択は、よくあるのですか?

根岸 東芝姫路に入ってからサービスダッシュを始めましたが、サービスダッシュをやめる選択は、実はこの時が初めてで。後ろでのストロークも得意ではないので勇気がいりましたが、考え方の幅が広がって収穫になりましたし、今後の選択も一つ増えました。実際に試合でも、サービスゲームでの失点が減ったので、良い判断だったと思います。

ーーーなんと、初めてとは! その時の志牟田さんの反応は?

志牟田 根岸は自分の考えもしっかり持っているので、背中を押してあげるだけというか。中谷選手はストロークもうまいので、不安に感じながらやるよりいいかなと思いました。後ろにいて短めを狙われたら逆に上がりやすいので問題ないし、急にサービスダッシュをやめたら相手に「なんで?」と思わせて、そこでも意表を突けますし。

 ペアを組み始めた頃から、基本的に根岸のやりたいようにしてもらっていました。しっくりきたら続ければいいし、しっくりこなければやめたらいい。前衛の感覚は分からないですし、性格も違うので。でも、年の差もありますが、言いたいことは言い合えるように。例えば、ダブル後衛と戦っている時なんかも「今はこっちの方がハマってますよ」とか言ってくれて助かりました。私は意見を言わないほうが怒るので(笑)。言いたいことを言い合うことは、組み始めた時から約束していましたね。

ーーー次の質問は前衛の動きのデータから。中谷選手がベースラインでのプレーやスマッシュを追う動きが多かったのに対し、根岸選手はボレーを狙う動きが多く、ボレーのポイントも、根岸選手が5、中谷選手が2と差がありました。最後までネットに詰めていた印象ですが、前で勝負したい思いがありましたか?

根岸 サイドや自分のところに持ってこられてのミスがあったので、前のボールはしっかり自分で守ろうと。志牟田さんにも「ロブは大丈夫だから」と言ってもらっていたので。スマッシュも好きですが、ネットに詰めてばっかりというより前後の動きをはっきりさせて、前に詰める時は詰める、後ろは後ろというポジションのメリハリを大事にしています。実は、決勝はスマッシュの調子が良くなくて……。でも、詰める意識は持ち続けていました。

志牟田 前田選手は流しも中ロブも得意なので、いつも早めに振るイメージがありますが、クロス展開では根岸が締めてくれていたので、根岸を警戒していたのかもしれません。根岸には「上はいいから、自分ができることに集中するように」と伝えていましたね。

(後編へ続く)

取材・文◎井口さくら 写真◎菅原淳